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最近の小型機のコクピット内に搭載されているG1000のようなアビオニクスでは、計器進入中の降下を自動で計算してくれますが、単に計器に従って飛ぶ以上に、例外への対象という意味、また計器進入を理解するという意味で、計器進入の飛行の際は、事前に自分でアプローチの分析を行っておく事が重要です。今回は、熊本空港のVOR Rwy 07を例に、分析してみましょう。

Full_Chart.jpg

日本の空のように、ICAO PANS-OPS Volume 2での飛行が基準になっているシステムでは、基本的に、CDFA (Continuous Descent Final Approach)の使用が勧められています。全体像としては、進入許可を貰った高度から一度降下を始めた後、降下を止めずに、最終進入の降下度数に乗せる進入のやり方です。FAAのシステムで、CDFAの利用は、今でも、Flight Directorに従って飛ぶ以外は上手く教えられていないのが現状ではないでしょうか。管制官から“Cleared for Approach” との指示があった際、上記のチャートに表記の通りKUE (Kumamoto VOR) を230度方向に飛んでいく訳ですが、この際、一定の高度からの降下プロファイルを意識しておく事が、効率的なアプローチの成功と安全の確保に繋がります。

先ずは、最終進入角度の把握。

Approach_Angle.jpg

この計器進入では、3.00°の進入角度が使用されている事が表記されています。KENGUと呼ばれるFIX (KUE DME 5.7) からの最終進入は、3. 00°の進入角度を使用するという意味です。また、KENGUに辿り着く高度は2421ftとの表記があり、CDFAの考え方としては、KENGUより前の地点からKENGUまで水平飛行しそれからまた降下を始めるのでは無く、ある地点で一定の降下度数(降下率ではありません) で降下を始め、KENGUを丁度2421ftで通過するというやり方です。図上の最終進入のスロープ角度をKENGUよりずっと前の地点に伸ばすと思ってください。最終進入コースに乗った後は、できるだけ変更(エンジン出力は微調整のみ) をしないやり方で、distractionも減らし、安全性アップ。又は、真下にある地区へのエンジン・ノイズの影響を減らします。

このアプローチでは、進入管制からvectorが無い場合を想定し、チャート上に表記の通り、KUE VOR通過は5500ft以上を想定しましょう。仮に、6000ftからの進入を許可されたとし、次に、VOR通過後、どの地点で降下を始めるかを考えてきます。先ずは、3.00°の理解をしましょう。

マイル毎の降下高度を割り出す

Tan (3.00) x 6076ftで、1 nautical mile (6076ft) 毎の降下高度を割り出します。計算機で凡そ318ftの答えが出てくると思います。

次に、6000ftから2421ftへの降下(3579ft)を、318ftで割ります。凡そ11.3nmの答えが割り出せます。KENGUより、11.3nm地点(旋回にて生じる距離を除き、KUE D17.0地点)から3.00°の降下を開始する事によって、一時的に降下を止める事無く、KENGUより最終進入に乗せる事ができる訳です。次に、KENGUの延長線上のDMEポイントでの高度を318ftを足しながら記入していきます。

KENGUは、KUE D5.7ですので、1.0nm毎の高度を書いていきます。

KUE D6.7 2739ft

KUE D7.7 3057ft

KUE D8.7 3375ft

KUE D9.7 3693ft

KUE D10.7 4011ft

KUE 11.0以内の高度は、2600ft以上で、上記の降下が2600ftを下回らない事を確認します。

上記の数字を頭に入れた上で、DMEと比べながら降下をする事で、一定の基準ができる訳です。

角度からFPMへの換算

一定度数での降下は、計器上に表示される降下率feet per minute (fpm)を、Ground Speedに応じて調節する必要があります。対地速度が速ければ速い程、降下率fpmも降下率を上げる使用する必要があり、逆に対地速度が遅ければ遅い程、低い降下率を下げる必要があります。この計算は、

(Ground Speed/60) x 318(先ほど割り出した3.00°のマイル毎の降下高度ft) で割り出す事ができます。例えば、対地速度100ktsの場合、(100kt/60min) x 318ft = 530fpmの降下率を使用する事で、3.00°の角度に乗ったままの降下が実施できます。実際、この降下率は、チャート上に表示されています。

fpm.jpg

fpm降下率への換算テクニックとしては、(Ground Speed/2) x 10や、Ground Speed x 5が使われていますが、修正をする際に、上記の計算でも出てきました通り、テクニック計算の式で割り出せる数字は実際の降下度よりも浅い降下だという事(318ftではなく簡単な300ftを利用している点から)を頭に入れておきます。対地速度が100ノットで、スロープよりも少し上に外れてきた場合、降下率は600fpmから700fpmに調整した後待つ。同スピードで、スロープよりも少し下に行ってしまった場合、降下率を300fpmから500fpmに調節した後待つ。このような微調整テクニックが生まれてくる訳です。このテクニックは、ILSなどの一定のスロープが計器上に表示される計器進入でも応用でき、進入中の余計な機体の上下を防ぎます。要は、100ktsで進入中に3.00°スロープ上で600fpmを超える降下や、500fpmに満たない降下をすると、安定してスロープには乗れないという事です。

Visual Descent Point (VDP)とMissed Approach Point (MAP)の関係について

VDP.jpg

プロの業界でも、VDPとMAPに関しては、勘違いが多数有ると感じられます。まずVDPとは、法的には定められている地点では無いという事です(VDPを使用しなかった場合に安定した進入を続行し、着陸できるかという件は別の話であり、恐らくできないでしょう)。逆にMAPは、法的に義務図けられた地点で、MAPより先の地点(滑走路上空など)で上昇を始めたとしても、進入復行missed approach設計上のプロファイルに乗る事が保証されません。山岳地帯で飛行される場合は、得に注意が必要です。MAP以前に滑走路が問題無く見えていたとしても、何らかの理由でMAP後に着陸復行go-aroundを行った場合も上記と同様、missed approach設計上のプロファイルに乗る事は保証されません。このような設計の保証上の理由から高高度、山岳地帯に面する空港では、MAPが滑走路よりも数マイル離れた地点に存在する事があります。

VDPは熊本空港の場合、チャート上に記載されていますが、記載されていない空港に進入する場合も、自分で計算しておくと良いでしょう。VDPより滑走路を目視した状態で進入を続ける事により、安定した飛行で着陸までたどり着ける為、急激な降下をする必要が無いという事です。計算式は以下の通り

MDHの269ft、289ft、309ftを取り、先程の318ftで割ります。

269/318 = 0.84nm

289/318 = 0.91nm

309/318 = 0.97nm

上記の数字は、滑走路末端からの距離ですので、この数字をDMEの値で読めるように、換算します。滑走路からの距離と、DMEの距離にはD0.1の誤差がある事が、MAPから滑走路の距離0.6nmとMAPのDME値D0.7を見て分かると思います。

VDP2.jpg

MAPは、滑走路からの距離に0.1を足した数値がDME値ですので、VDPも同じく、上記の数字に0. 1を足します。訓練機のようなCategory Aの場合、凡そD0. 9地点がVDPとなります。この地点で”minimum”判断をする事により、MDAを下回らず、着陸ができる場合は、安定した3.00°の進入を続ける事ができるという訳です。

注意 実際問題、法律上、ILSなどDAのある計器進入とは違い、MDAが存在する進入で、判断即時にMDAを下回る事は禁止されていますので、CDFA使用の場合、MDADAとして使用する事の許可(LOAもしくはOpSpecs)が必要な場合が殆どです。このような許可が無い場合、50ftMDAに追加した地点Category Aの場合、269ft+50ft地点でVDPを換算します

逆に、滑走路から0.6nm地点MAPで飛行機がMDA 870ft (269ft降下しないといけない状況)の場合、448ft/nm約4.2°の急激な降下となってしまいますので、着陸が不可能となる場合があります。

ヨーロッパの空港では、CDFAは義務付けられており、滑走路延長線上の数字は既に発行してある空港があります。これを下回る飛行は、法律で禁じられている空港もありますので、CDFAテクニックは世界で通用するパイロットテクニックの一部として勉強しておくと良いと考えます。