シャンデル
基礎知識
このレッスンでは、ACSで規定されているように、対気速度と操作入力量の変化を考慮して、シャンデルを完了させる要素を紹介します。シャンデルは、ほぼ直進かつ水平な飛行姿勢から始まり、つぎに翼が水平状態になる180度旋回点において、機首上げの姿勢ならびに最小の制御可能な対気速度で終わる最大パフォーマンスに基づいた上昇旋回操作です。機体は、失速することなく、設定されたバンクと出力に対して可能な限り最大の高度を獲得する必要があります。この操作は、最大パフォーマンスの飛行操作中におけるパイロットの調整、方向、プランニング、およびコントロールの精度を高めます。
最大パフォーマンス
- 機体は失速せずに、バンク角と出力設定によって得られる最大の高度まで上昇する必要がある
- ただし、大気状態に係る制御できない変数が多いと、高度の増減に影響を与えるので、操作後に得られた高度はシャンデルマニューバの良し悪しを決める基準とはならない
シャンデルのパフォーマンス
開始前
- 高度を選択
- 1,500’AGL以上であること
- 高度計で読みやすい高度を選択すること
- 500’単位
- 高度計で読みやすい高度を選択すること
- 1,500’AGL以上であること
- 操作前チェックリスト
- 操作を行うエリアが他のトラフィックの妨げになっていないことを確認すること
- 選択高度と、またはその上下高度
- フラップとギア(格納可能着陸装置の場合)はUPの格納位置にする必要がある
- 機体は巡航出力の設定で直進かつ水平に飛行させる
- 対気速度は、製造元が推奨する最大速度とVaを超えないようにすること
- 機体の機首方位に注意すること(ロールアウトは逆方向の機首方位になるため)
- 旋回方向の翼の視覚参照点90度を選択すること
最初の90度旋回
- スムーズに30度バンクによる旋回へ進入する
- 通常、バンク角は30度を超えてはいけない
- バンク姿勢が確立されたら、バンク角は旋回90度点まで一定に保つ
- 対気速度が下がるにつれて、旋回速度が上がることに注意(オーバーバンキング傾向)
- バンク姿勢が確立されたら、出力を最大に設定し、上昇旋回を開始
- この操作では、これ以降出力の調整は行わない
- 操縦桿をスムーズに引いてピッチ角を一定で上げていき、旋回90度点で最大ピッチ姿勢となるようにすること
- ピッチ姿勢は約12度
- よくある間違い - 操作中のストール
- よくある間違い - 入力または完了時にピッチ、バンク、出力の調整が不適切
- ピッチ操作が速すぎると、旋回180度点に達する前に機体が失速してしまう
- ピッチ操作が遅すぎると、旋回180度点において目標の失速直前速度からかけはなれてしまう
- 対気速度は、進入速度と制御可能最低空速度間のほぼ中間程度に設定する必要がある
- 均等のとれた調整を維持し続けること!
- 旋回中、対気速度が下がるにつれトルク効果はより顕著になる
- ヨーを制御し、調整を保つために、右ラダーを徐々に増加させること
- 左旋回では、右ラダー入力の必要性が少なくなる
- 右旋回では、エンジントルクが増加するので、右ラダーの入力が必要になる
- 旋回中、対気速度が下がるにつれトルク効果はより顕著になる
- よくある間違い - フライトコントロールの非調整的な使用
- まとめ:最初の旋回90度点において = バンク一定、ピッチを上げ続ける
- バンクは一定に保たれている
- 旋回90度点で最も高いピッチ姿勢(12度)に達するため、一定の速度でピッチを上げ続ける
- 右ラダー入力を増やして、機体操作の調整を保つ
- よくある間違い – プランニングが不適切で、ピッチとバンクの姿勢が変わるタイミングが不適切
2回目の90度旋回
- 旋回が90度点に到達すると、ピッチ姿勢(最大12度)の増加率は一定に保ちつつ、バンク角をさらに一定のレートで戻すロールアウト操作を開始する
- 機首方位が30度進むたびに、約10度ずつバンク角を水平に戻していく
- 対気速度が下がるにつれ、一定のピッチ姿勢を保つために操縦桿をより強く手前に引く
- 対気速度が失速速度に近づき、機体を失速させずに最大のパフォーマンスを得るには、操縦桿の引きを維持する
- よくある間違い - 操作中のストール
- Pファクターとスリップ・ストリームによって生じる左旋回傾向が広まるため、どの旋回方向に対しても右ラダーの入力は調整する必要がある
- よくある間違い – フライトコントロールの非調整的な使用
- まとめ:最初の旋回90度点において = ピッチを一定、バンクを水平になるまで下げ続ける
- 操縦桿の引きはピッチ姿勢(最大12度)を維持するように調整
- バンクが一定率で減少し、旋回180度点で翼が水平になるよう旋回する
- 対気速度の減少に伴い必要に応じてラダー入力量を増やすこと
- よくある間違い – プランニングが不適切で、ピッチとバンク姿勢の変わるタイミングが不適切
ロールアウト
- 翼が旋回180度点で水平になるようにロールアウト時間を設定すること
- 機体の対気速度が制御可能最低速度である間は、ピッチの姿勢を一時的に保つ必要がある
- 左シャンデルロールアウトの場合
- 機体ノーズを左に引っ張る力は二種類ある
- 左翼はかならず、左エルロンを下げることで上昇させる必要がある
-
- これにより、さらに多くの抗力が生じ、機体が左にヨーする傾向が生じる
- 低速では、トルク効果も飛行機を左方向にヨーさせようとする
- 調整を維持するには、ロールアウト中に右ラダーの入力を増やして、エルロンの抗力とトルクの影響にカウンターを当てる必要がある
-
- 左翼はかならず、左エルロンを下げることで上昇させる必要がある
- 機体ノーズを左に引っ張る力は二種類ある
- 右シャンデルロールアウトの場合
- 右翼をかならず、右エルロンを下げることで上昇させる必要がある
- これにより、右翼の抗力がさらに大きくなり、機体が右に旋回する傾向が生じる
- 同時に、低速によるトルクの影響で機体ノーズが左に引っ張られる
- エルロンはノーズを右に引っ張るため、トルクとは互いに反対方向へ力が働く
- 右ラダーによる修正が必要な時間が短縮される
- エルロンはノーズを右に引っ張るため、トルクとは互いに反対方向へ力が働く
- 同時に、低速によるトルクの影響で機体ノーズが左に引っ張られる
- これにより、右翼の抗力がさらに大きくなり、機体が右に旋回する傾向が生じる
- このロールアウトは、主にエルロン操作によって実現する
- 右ラダーの入力を徐々に緩め、調整を維持する必要がある場合にのみ左ラダーを適用する
- 右翼をかならず、右エルロンを下げることで上昇させる必要がある
- どちらの場合も(右または左のロールアウト)、翼が水平の場合は、エルロンによる抗力が中和され、トルクのみが再び作用する
- よくある間違い – フライトコントロールの非調整的な使用
- よくある間違い - 入力または完了時にピッチ、バンク、出力の調整が不適切
マニューバの完了
- 水平飛行姿勢に戻るためのピッチ角を徐々に下げ、一定の高度を維持しながら機体を加速させる
- プロペラのジャイロ歳差に起因する付加トルクを相殺するために、ピッチ姿勢を下げている間は右ラダーの入力を増やさせなければならない
- 巡航のピッチ、出力、トリム設定を調整する
- よくある間違い - 最大パフォーマンスを達成する際の障害に関連する要因
- ピッチ(ならびに対気速度)が正しく設定されない場合、最大パフォーマンスが低下する
- ピッチが高すぎると、最大パフォーマンスに達する前に機体が失速し、反対に低すぎると得られる上昇高度が減少する
- ピッチ(ならびに対気速度)が正しく設定されない場合、最大パフォーマンスが低下する
- バンクが正しく確立されていないと、最大パフォーマンスが低下してしまう
- 常に30度によるバンク姿勢が不可欠である。バンク角が大きすぎると、旋回が予定より早く完了してしまい得られる高度が低くなる。一方で、バンク角が小さすぎると、旋回が完了する前に機体が過度に減速したり、失速に陥ったりする
- 出力が最大に設定されていない場合、最大パフォーマンスが低下する
- 出力が最大に設定されていないと、最大パフォーマンスが低下してしまう
- 機体が均衡に調整されていない場合、最大パフォーマンスは低下してしまう
- 近郊に調整されていない操作の結果、余計な抗力が発生し、最大パフォーマンスが低下してしまう
よくある間違い
- 進入時または完了時のピッチ、バンク、出力の不適切な調整
- 均衡のとれていないフライトコントロール
- ピッチとバンク姿勢変更の不適切なプランニングとタイミング
- 最大パフォーマンスを達成できないことに関する要因
- 操作中の失速
完成基準
訓練生は、教官の支援なしで、スムーズかつ調整されたシャンデル操作を実行できます。訓練生は、操作全体の制御と調整に影響する要因も理解しています。
成功のポイント
本レッスンの各項目をレビューすること
シャンデルは、180度の上昇旋回を行う最大パフォーマンス操作です。 旋回の前半では、ピッチは常に増加しますが、バンクは一定に保たれます。 そして後半を通して、ピッチは一定に保たれ、バンクは常に減少します。この操作機動中、特に機体の速度が低下するときは、姿勢を調整しておくことが重要です。
- シャンデルの目的と基本的/高度な飛行技能との関係について
- 進入高度の選択について
- 進入対気速度と出力設定について
- 注意と計画について
- 飛行制御の調整について
- 機動中のさまざまな時点でのピッチとバンクの姿勢について
- 左右の旋回におけるトルク効果の適切な修正について
- 最大パフォーマンスの達成について
- 完了手順について
参考資料
- FAA-H-8083-3
- POH/AFM