トラフィックパターン
基礎知識
各フライトは、空港、又は、その他適切な着陸エリアとして定められる場所で始まり、終了します。このため、パイロットは、さまざまな空港で使用される規則、手順、パターンレイアウトを学ぶ事が重要になってきます。このレッスンでは、正しくトラフィックパターンを飛行できるように、関連する規則と手順を説明します。制御空港と非制御滑走路、両方での、トラフィックパターンの適切な手順、規則、要素を理解しましょう。
トラフィック・パターン
- 制御空港 ー パイロットは、管制から到着/出発クリアランス、及び、パターンに関する情報・指示を受けた上で飛行する。
- 非制御空港 ー パイロットが、パターンの方向を決め、適切な規則に従って飛ばす。
- 一度、基本トラフィックパターンに慣れると、殆どの空港への到着/出発は簡単である。
標準トラフィック・パターン
- 基礎知識
- パターン高度:通常1000ft AGL
- 共通の高度の使用が、非制御空港での衝突を最小限に抑える上で、重要な要因である。
- 標準外のパターン高度指定は、チャート・サプリメントに記載されている。
- 標準トラフィック・パターン:左旋回が基本
- チャート・サプリメント、管制官、空港標示などに特別な記載がない限り、全て旋回は、左に行う。
- 旋回に、30度を超えるバンクを使用しない。
- 飛行機のコーディネーションを維持する為に、ラダーを使います。クロスコントロール失速が発生する可能性がある為、旋回速度を上げるためにラダーを使用しない。
- パターン高度:通常1000ft AGL
トラフィック・パターンの区分(Legと呼ぶ)

- アップウィンド Leg ー 滑走路の方向と平行に飛行した出発 leg
- クロスウィンド Leg ー アップウィンドからダウンウィンドへの移行 leg
- アップウィンド Legと垂直 (90o旋回)
- 次のダウンウィンド飛行時に、滑走路から約1/2~1マイル離れるよう、クロスウィンドを調節するように飛行する。
- アップウィンド Legと垂直 (90o旋回)
- ダウンウィンド Leg ー 着陸予定滑走路と平行
- 飛行針路は着陸滑走路の間反対
- 例)着陸滑走路09の場合、ダウンウィンドHDGは270度(無風の際)
- 滑走路から約1⁄2~1マイル
- 着陸前のチェック、又、設定(フラップ、ギア)は通常このダウンウィンド Legで行われる。
- トラフィック・パターン高度からの降下は、通常、ダウンウィンド Legで、タッチダウンのポイントが自分から90度(abeamと呼ぶ)に見える地点で開始される。
- ダウンウィンド Legは通常、滑走路の出発点を過ぎ、着陸しようとする地点が、自分の背後45度に見える地点まで続く。
- 上記、ダウンウィンドが終わる地点からベース Legへの旋回を始めます。
- ベース Legへの旋回を開始する地点は、状況に応じて調節する。
- 風、他の航空機、緊急事態など、調整が必要な場合がある。
- ベース Legへの旋回を開始する地点は、状況に応じて調節する。
- 上記、ダウンウィンドが終わる地点からベース Legへの旋回を始めます。
- 飛行針路は着陸滑走路の間反対
- ベース Leg ー 滑走路に対し垂直で、ダウンウィンドLegからファイナルへの移行Leg
- この地点で、飛行機の地上針路は、滑走路の延長中心線に対して垂直である必要がある。
- 無風の状態で、飛行機のHDGは、滑走路の方向から90度。
- 下降を続け、ピッチとパワーを必要に応じて調整し、速度、スロープ、着陸の照準点を維持する。
- 滑走路の延長中心線に丁度来るように、ファイナルへの旋回を始める。
- 無風の状態で、飛行機のHDGは、滑走路の方向から90度。
- この地点で、飛行機の地上針路は、滑走路の延長中心線に対して垂直である必要がある。
- ファイナル ー 着陸滑走路に沿った、進入の最終降下
- 飛行機を、滑走路の中央に配置するためにベースLegからの旋回を調整する。
- 地上線維持の為、風に向けクラブ修正を入れる。
- ピッチとパワーを必要に応じて調整し、速度、スロープ、着陸の照準点を維持する。
トラフィック・パターンの出発
- アップウィンド Legで上昇
- パターン内に残る場合は、滑走路の出発端を越えた上で、パターン高度より300フィート以内にクロスウィンドLegへ旋回する。
- パターンを出発する場合、まっすぐ出て行くか、45度左に曲がって出て行く(右のパターンの場合は右)
目的地上針路の維持(全てのLegにおいて必須)

-
風向きや風の速度に関係なく、長方形のパターンを飛ばす事を目標とする。
-
飛行機を地面に対し直進させるために、風に向け、飛行機のHDGを変える必要がある(crab angleと呼ぶ)。
- 航空機に対する風向の認識を維持し、必要に応じてHDGを調整し、地上のトラックを維持する。
-
参照ポイントを使った、グラウンドトラックの維持

- アップウィンド: 後ろを軽く振り返り、滑走路の中心線が維持できている事を確認。
- クロスウィンド: 滑走路を参照し、風の影響に関する注意と修正(滑走路の方向、もしく反対方向に流されるかもしれない事を注意)。
- ダウンウィンド: 滑走路を翼の前端のある点に見えるように置き、必要に応じて調整する。
- 例) 滑走路をストールストリップの端に置くか、燃料キャップの外側に置く(航空機、およびローカルパターンの手順に最適な基準点を選ぶ)。
- ファイナル: 必要に応じて中心線とクラブ角を維持し、風に合わせて修正する。
- 地元で良く知られた空港には、それなりに良く知られたパターンの参考地点がある可能性がある。
- 良く有る間違い ー 高度または速度の制御が不十分
- パターン内の特定のポイントで必要な速度を把握する(また、クラスD空域の最大速度は200 kts)。
- 必要に応じて速度調整する。速度が極端に速かったり、遅かったりすると、他の航空機に危険が生じる可能性がある。
- 計器を絶えずスキャンして、必要な速度と高度を維持する。必要に応じて、きめ細かく調整を行う。
- 低速、低高度ではスピードのコントロールが非常に重要。
- 地上1000フィート以下での失速は、回復不能になる可能性もあるという事。
- パターン内の特定のポイントで必要な速度を把握する(また、クラスD空域の最大速度は200 kts)。
- 良く有る間違い ー 風の吹き寄せに対する不適切な修正
- パターンを長方形に維持する。必要に応じてクラブ角を風の方向へ入れる。
- HDGバグを使うか、ATIS/ASOSからの風の方向を頭に入れ、必要に応じて風の向きを調整する。
- 外の参考ポイント・ビジュアル・レファレンスを使用する。
制御空港 (管制塔運用の空港)
- パイロットが、空港への到着・出発許可と、トラフィック・パターン関連情報を無線で交信する。
- ATCが、パターンへの到着・出発方法(場所と、進入方法)を指定した上で指示。
- パターン内では、管制官がパターンのLeg(速度、脚の長さ、間隔の回転など)を調整する。
- 良く有る間違い:トラフィック・パターンの指示、手順、ルールに従わない。
- ルールを把握し、無線通信内容と指示を確実に理解する。
- よく分からない時は、管制側に質問する。
- パターン内では、操縦、衝突回避、チェックリスト、および通信の注意を分割する習慣を身に付ける。
- ルールを把握し、無線通信内容と指示を確実に理解する。
非制御飛行場 (管制塔が運用されていない空港)
無線通信
- 非制御の飛行場では、2つ、自分の意図を伝え、空港・トラフィック情報を取得する方法有り。
1)アドバイザリーを提供するFSS(Flight Service Station)との通信
- FSSは風の情報、使用滑走路、高度計の設定、既知のトラフィック、NOTAMなどを提供。
- FSSは、管制官ではないという事。FSSは単に情報をパイロットに提供するだけ。
- 到着する航空機は、10マイル前に、高度、航空機の種類、位置を報告し、交信する。
- 出発する航空機は、飛行機の登録番号、飛行の種類、目的地、希望するサービス、その他必要な項目を交信する。
- FSSは、管制官ではないという事。FSSは単に情報をパイロットに提供するだけ。
2)CTAF上での自己アナウンス型ブロードキャスト(周波数は、Chart Supplementとセクションに記載されている)
-
- CTAFの周波数上で、自分の位置と意図を発信。
- CTAFで他の航空機の呼び出しをモニター、必要に応じて飛行を調整し、危険を避ける。
到着
- 既にパターン内で飛行している他の航空機を観察し、使用中のトラフィックパターンに合わせる。
- 他の航空機がパターン内に居ない場合は、滑走路のトラフィックインディケーターや風の方向を見て使用滑走路を選択する。
- L字型の表示と、ダッシュラインの円が一緒になった表示が地面あるかどうかを確認(Lの短い部分が旋回方向を示す)。
- 滑走路近くの表示を、パターンの高度より更に上の高度(500~1000フィート上)から確認する。
- パターンの方向は、チャート・サプリメント、およびセクショナル・チャートでも確認できる。
- パターンの方向が決定したら、降下する前に、パターンから十分離れた場所に進む。
- パターン高度で水平飛行の状態、ダウンウィンドレグに対して45度の角度で、パターンに入り、滑走路の中点(肩90度地点)まで飛行する。
- 降下しながらパターンに入る事は避ける➞衝突の危険が生じる。
- カウリングの下は見えないので、知らない間に、パターン内を既に飛行している他の飛行機の上に降下する危険性有り。パターンの高度で入り、空域を積極的にクリアする事が大事。
出発
- ローカルエリア内の他の航空機からの無線通信をモニターする。
- 自分の意図を無線で発信する。
- 出発前と出発時は、エリアを積極的にクリアする。
- 無線通信は、非制御フィールドでは義務図けられていないという事を覚えておく。
- 良く有る間違い:トラフィック・パターンの指示、手順、ルールに従えてない。
- ルールを把握し、無線通信も確実に理解する
- パターン内では、操縦、衝突回避、チェックリスト、および通信の注意を分割する習慣を身に付ける。
- 特に、非制御の飛行場では、積極的にトラフィックのクリアを行う。
- 非制御の飛行場で使用されている手順に従う。
滑走路との方向感覚・オリエンテーション
- 使用中の滑走路を把握し、滑走路と自分の方向・位置の把握を維持する。
- 滑走路位置をHDG Indicatorとの関係で視覚化た上で、進入計画をする。
- 全パターンLegにおいて、HDG Indicatorで滑走路番号を確認する。
- ダウンウィンド:着陸滑走路の逆。ベース:パターン方向より90度。ファイナル:滑走路番号と同じ
チェックリスト
- トラフィック・パターンへ入る前/入った直後に、着陸前のチェックリストを完了させる。
- チェックリストを再度実行し、全て完了していることを確認する。
ファイナル・アプローチの確立
- ベースLegは風の状態に応じて調整する。
- 風が強ければ強いほど、対地速度が下がり、アプローチが短くなるため、ベースLegが近づく。
- ファイナルへの旋回地点は、1/4マイル以上で、選択したスロープに適した高度である事。
- 通常、3度のスロープを使用。3度のスロープでは、1マイルにつき、300フィート降下する。
適切な間隔の維持
- パターン内では、他のトラフィックを観察し、間隔を維持する必要がある(他の航空機の位置を知る必要がある)。
- 自分の飛行機がダウンウィンドで、他の航空機がファイナルを飛んでいる場合、ファイナルに居る飛行機が自分の飛行機の90度地点(肩の位置)に来るまで、ベースへの旋回を遅らせる。
- このテクニック利用で、同じ速度で飛ぶ飛行機との間隔を確保する事ができます。
- 自分の飛行機がダウンウィンドで、他の航空機がファイナルを飛んでいる場合、ファイナルに居る飛行機が自分の飛行機の90度地点(肩の位置)に来るまで、ベースへの旋回を遅らせる。
- 必要に応じてアップウィンドLegの長さ(時間)を調整し、ダウンウィンドを飛ぶ他の航空機との間隔を交渉する。
- 制御空港の空域内では、管制側がパイロットに一定の操作を指示・アドバイスをし、間隔を調整する。
- 制御空港、非制御空港関係無く、他の航空機の目視と回避の責任はパイロットが負う。
- 良く有る間違い ー 他の航空機との不適切な間隔
- パターン内で、前を飛んでいる飛行機より速く飛んだり、他の飛行機を追って、早く旋回をしない。
- 自分の飛行機(ダウンウィンド)が、ファイナルを飛ぶ他の飛行機の90度地点に来るまでダウンウィンド上で待つ。自分の飛行機がアップウィンド、他の飛行機がクロスウィンド、もしくはダウンウィンドを飛んでいる場合も、同様に、90度地点に来るまで、旋回を待つ。
ウインドシアとウェーク・タービュランス
ウインドシア
ウインドシアに対処する最善の方法は、完全に避けて飛ぶ事です(雷雨の中や近くを飛ばない)。
アプローチ中にウインドシアの可能性がある場合は、高めのパワーと速めの速度(POHで説明されている)、を使用し、着陸するまでできるだけ高度を高め(実用的な限り)に維持し、予想外の速度・ピッチ変化の兆候が見られた場合、即ゴーアラウンドを実行します。
ウェーク・タービュランス
- 着陸時: 離陸するジェット機の離陸地点より手前で着陸し、離陸した飛行機の上を飛行する。また、着陸したジェット機の着陸地点より後に着陸する。
- 離陸時: 離陸するジェット機の離陸地点より手前で離陸、離陸した飛行機の上を飛行する。また、着陸した飛行機の着陸地点の後に離陸する。
良く有る間違い
- トラフィックパターンの指示、手順、およびルールに準拠できない
- 風によるドリフトに対する不適切な修正
- 他の航空機との不適切な間隔
- 高度または速度の制御が不十分
完成基準
空港トラフィックパターンのルールと要素を理解し、制御空域にある空港と制御無しの空港やフィールドからの出入りを快適に行う。
成功のポイント
- 管制塔の有無に関わらず、空港や海上機ベースでの運航
- トラフィック·パターンの手順、指示、ルールの遵守
- 他の航空機との適切な間隔を維持する方法
- 目的の地上線の維持方法
- ウインドシアとウェーク・タービュランスの回避手順
- 滑走路または着陸エリアを使用する際の方向感覚
- 滑走路や着陸地から適切な距離でファイルアプローチを確立する方法
- チェックリストの使用
参考資料
- FAA-H-8083-3
- FAA-H-8083-25
- AC 90-42
- AC90-66
- AIM
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