時計を利用したコンパスヘディングへの旋回
基礎知識
このレッスンではMC(Magnetic Compass:方位磁針)の誤差に関する要素を紹介し、実際に方位情報の確認にコンパスを使用できるようになることを目指します。方位磁針による旋回は、機首方位計を用いた場合ほど単純ではありません。ここではMCの動作と誤差、及び飛行機内でのそれらの克服方法について説明します。ジャイロ計器(HI-Heading Indicator:機首方位計)を紛失した場合は、方位情報を得るためにMCが示す方位に向かう必要があります。この状況で空港に乗り込んで着陸することができるように、その運用を正しく理解することが非常に重要です。
MC(Magnetic Compass:方位磁針)
動作
- 2つの小さな磁石が取り付けれた金属フロートが、透明なコンパス液で満たされたボウル内に密閉されている
- 方位が記載されたカードはそのフロート外周に巻き付けられ、容器の外側からラバーラインで見ることができる
- ラバーライン:方位磁針または方位計で使用される参照線のこと
- フロート/カードは、その中央にバネと共に鉄製のピボットを持ち、硬いガラス容器の中に取り付けられている
- 浮きの浮力は、ピボットの重みのほとんどを取り除く
- このガラス容器とピボットタイプの取り付けにより、フロートは約18°まで傾くことができる
- 磁石は地球の磁場に沿って動くので、ラバーラインの表記は実際とは反対向きにされており、操縦士はそれを後ろから見ることになる
- 例えば、北に向かって飛行中の機体に搭載された磁石を真上から見たとき、磁石自体の南北が縦の線で並んだとする
- その際、その磁石を進行方向に向かって真後ろから(操縦士が計器を見る方向から)見ると磁石上の南側が目に入る形になる
- ラバーラインはその南側に”北”の表示を施しており、そのため機体が反時計回り北から南へ右旋回する際は、その表記が時計回りに動いていく
- 方位が記載されたカードはそのフロート外周に巻き付けられ、容器の外側からラバーラインで見ることができる
エラー
Variation(偏差)
- 磁気的および地理的な北極の位置の違いによって生じる
- 磁北極は北極点と同位置に存在しない
- これが真方位と磁方位の違いに繋がる
- Isogonic Lines (等偏差線):航空図上の、同じ磁気偏差を持つ点を結んだ線のこと
- Agonic Lines (無偏差線):地球表面を縦に横切る不規則な架空の線で、磁極と地理極が同一線上に並び、磁気偏差が存在しない
Deviation(誤差)
- 航空機内に搭載された電気により駆動する機器類による局所磁場によって引き起こされるコンパスの誤差のことで;それぞれの方位によって異なる
- コンパス内の磁石はいずれかの磁場に合わさる
- 電流による局所地場が地球の磁場と競合することで発生する
- この誤差は方位によって異なり、コンパス補正カードに表示されている
Compass Course(磁方位コース)の見つけ方
- 真方位(True Course) ± 偏差(Variation) = 磁気方位(Magnetic Course) ± 誤差(Deviation) = コンパスコース(Compass Course)
Remember: East is Least, West is Best
真方位から偏差を差し引き、真方位に偏差を足し加える
Dip Error(傾斜エラー)
- 何が起こっているのか
- 磁束線は磁北極から、磁南極へ入ると考えられている
- この両極では、それらの線は地表に対して垂直になる
- そうなると赤道上では、それらの線は地表に対して平行になる
- 磁石はこれらの磁場に沿うため、フロート/カードは磁場及び両極の近くで傾いたりする
- 磁束線は磁北極から、磁南極へ入ると考えられている
- フロートは小さな対傾斜用の錘でバランスがとれているので、相対的な水平を保とうとする
Northerly Turning Error(北寄りに回転するエラー)
- 地球磁場の垂直成分に引っ張られることによって発生する
- 例えば北の方位に沿って飛行中、東の方位へ旋回を行うと次のような流れが発生する
- 機体が右に傾き、コンパスカードもそれに伴い右に傾く
- すると、先の垂直成分がコンパスの北端側を右に引き寄せる
- フロートが回転し、ラバーラインが西を表示するように左に回転する(実際の方位と逆)
- 西の方位へ旋回する時も同様で、フロートは東を表示するように右回転する
ヒント:北の方位から旋回を開始すると、コンパスの表示はタイムラグが発生して遅れる
- また南の方位に沿って飛行中、東の方位へ旋回を行うと次のような流れが発生する
- 先の垂直成分がコンパスの一端を引き寄せ、フロートのラバーラインが東を表示するように右に回転する(実際の方位と同じ)
- 西の方位へ旋回する時も同様で、フロートは西を表示するように左回転する
ヒント:南の方位から旋回を開始すると、コンパスの表示は実際の方位より先んじる
Remember: UNOS
Undershoot North, Overshoot South
Acceleration Error(加速度誤差)
- 傾斜用の錘は、フロート端にある北表記(磁石の物理的な位置においては南)を反対のもう一端より重くしている
- もし航空機が東の方位に加速すると、重みの慣性がフロート端を後ろに保つため、その表記はは北に向かって左回転する
- もし航空機が東の方向に減速すると、慣性が重みを前に動かすため、フロート表記は南に回転する
- また、西の方位に加速すると同様の現象が発生する
Remember: ANDS
Accelerate North, Decelerate South
Oscillation Error(振動誤差)
- 振動は、他のすべてのエラーの組み合わせである
- その結果、飛行中コンパスカードはその機種方位に向かって前後に揺れ動いてしまう
- 方位磁針を用いて方位計を設定する場合は、だいたいの平均をすること
TC(Turn Coordinator:旋回釣合計)内の小型模型飛行機の校正
- 時計の秒針が設定した基点を通過する際に標準率旋回を開始し、機首方位計または方位磁針の針路を確認する
- 10秒間隔で変更を行うように注意すること、飛行機が10秒で30度以上旋回する場合は、標準率旋回のためにバンクの角度を調整する
- 旋回釣合計が両方向に較正されたら、必要な修正を書き留め、すべての旋回に適用する
- 航空機のクロスチェックとコントロールは、方位磁針の代わりに時計を使用する場合を除き、通常と同じ方法で行うこと
- TCは、主にバンクを確認する計器になる
- ALT (Altimeter:高度計) は、主にピッチを確認する計器になる
- ASI (Airspeed Indicator:対気速度計) は、主にエンジン出力を確認する計器になる
Full Panel & Partial Panel(全計器表示&部分計器表示)におけるMCを用いた旋回
- 旋回操作を入力し、時刻の計測を開始する
- 設定時間が経過し、翼を水平に戻すまで、標準率旋回の姿勢を維持する
- もし部分計器表示による旋回が行き過ぎてしまった場合は、旋回完了時に方位磁針を確認すること
- 方位磁針を使用する際は、コンパスの偏差を考慮に入れること
完成基準
操縦士は方位磁針の偏差を補い、それを用いて様々な機首方位に向かって飛行することができます。
よくある間違い
- 誤った調整手順
- タイミングが正しくない
- コントロールの統制が取れていない
- トリムコントロールが正しくない
成功のポイント
以下についてレビューすること
- 方位磁針の動作特性と誤差について
- 旋回釣合計の小型模型飛行機の左右の校正は、全計器表示と時計を用いて行うこと
- 全計器表示および部分計器表示における、方位磁針を用いた特定方位への旋回を行う場合の手順について
参考資料
- FAA-H-8083-9
- FAA-H-8083-15
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