異常飛行姿勢からの回復
基礎知識
このレッスンでは、異常な飛行姿勢からの回復操作に関わる要素を紹介します。全計器表示&部分計器表示(ジャイロ計器の障害)における上昇旋回またはスパイラルでの急降下状態からの復行と同様に、最も起こり得る異常姿勢に対しても正しい操作を行うことが重要です。雲中で異常姿勢に陥った場合は、計器のみを頼りに、姿勢を認識し、そこから回復する能力が不可欠です。
全般
- 異常姿勢は意図的な操作によるものではないため、思いがけないことが多い
- それに対する反応は、知的かつ故意ではなく、いっそ本能的であることが多い
- 各人は通常、乱流状態、過度の速度、低い高度で危険に対しては尋常でない努力をもって反応する
- それに対する反応は、知的かつ故意ではなく、いっそ本能的であることが多い
- クロスチェックによって異常姿勢を認識したとき、火急の問題は、どうして起きてしまったのかではなく、何が進行しているのか、また、できるだけ早く直進水平飛行に戻すことである
異常姿勢の状況&状態
- 参照できる適切な視覚情報がないと、操縦士は航空機が異常な姿勢に突入することを意図せず許してしまうことがある
- 異常姿勢はいくつもの原因によって引き起こされる、例えば;
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異常姿勢の認識
- 一般規則:計器の変化量または基本的な計器飛行に関連のない計器の変化量を記録する場合、異常姿勢を疑い、機体の姿勢、計器の誤差、誤動作を確認するためのクロスチェックの速度を上げること
- 正しくないコントロールで異常姿勢の状態を悪化させないように、最初の計器の読み取りは正確でなければならない
機首上げの姿勢(上昇旋回)
- ALT (Altimeter:高度計)、VSI (Vertical Speed Indicator:昇降計)、ASI (Airspeed Indicator:対気速度計)、およびAI (Attitude Indicator:姿勢指示器) による動きの速度/方向で示される
- 急速に減速する対気速度
- 高度が急激に上がる(または目標高度より速く上げる)
- 姿勢指示器は、バンクの情報を示す
機首下げの姿勢(らせん下降)
- 同様の計器で表示されるが、反対の方向である
- 急速に増加する対気速度
- 高度の急減(または目標高度より速く下降する)
- TC (Turn Coordinator:旋回釣合計) はバンクの情報を表示する
- よくある間違い - 異常な飛行姿勢を認識できない
- このエラーは、機器のクロスチェックと解釈の精度が悪いため引き起こされる
- 通常と違う姿勢を取ったら、機体がどうしてこうなったという原因ではなく、どうやって回復するかを考えるように
- 異常に大きいか、またはソフトなエンジンの駆動音と風音が原因の場合もある
基本的な回復操作
- 異常姿勢においては、パイロットは通常、姿勢指示器で方向を変更できるが、この操作は行わないように:
- もし姿勢指示器がおかしな動作を示す場合は、表示可能限界を超えている可能性がある
- 機械的な機能不全のために動作不能になった可能性がある
- もし、おかしな動作でなくとも、または正しく動作していても、最大5度程度のピッチとバンクのエラーが発生する可能性がある
- 極端な姿勢では計器を解釈することが難しい
- 回復は、ASI, ALT, VSI, TC を参照して開始する必要がある
- よくある間違い:計器の指示ではなく「感じる」ことで、異常姿勢から立ち直ろうとしている
- 空間識失調を引き起こす最も危険な錯視は、内耳で受け取った情報によって生じる
- 内耳の運動系は騙され、虚偽感覚が生じる
- 空間識失調は通常、異常姿勢において発生するので、飛行機の計器を信頼し、解釈しなければならない
機首上げの姿勢(上昇旋回)からの回復
- 機首上げの姿勢 - 対気速度が下がるか、または目的の設定より低い場合:
- エンジン出力を増加
- エレベータに対して前方の舵圧力を加えて機首を下げる(失速を防ぐ)
- TCを参照して均衡のとれたエルロンとラダー調整を用いてバンクを修正する
- AOA(Angle Of Attack:迎角)を減らす前にエルロンの入力操作を加えるとスピンが生じる
- 上記の手順は、上から順に行われるが、実際はほぼ同時に行われる
- よくある間違い:回復操作中に不適切なコントロール手順を使用してしまう
- 回復操作を開始する前に、計器の指示を正確に解釈する
- 回復手順を順に実行する
- コントロール量は大きい場合もあるが、スムーズで積極的かつ迅速な調整が必要である
- 初動の操作が入力された後は、適切な修正を行うために高速でクロスチェックを続けること
- 水平飛行は次のように表示さる
- ALTとASIが反転して安定する
- 均衡のとれた直進飛行は、次のように表示される
- TC内の小型模型飛行機を水平に保ち、ガラス管内のボールを中央に維持する
- よくある間違い - 水平飛行の姿勢を逸脱してしまっても計器表示に基づいてそれを認識できない
- AIを用いる場合、TC内の小型模型飛行機が水平になると水平飛行の姿勢と読み取れる
- AIを用いない場合、ASIと高度計が反転して安定することで水平飛行であると読み取れる
機首下げ(らせん下降)からの回復
- 機首下げの姿勢 - 対気速度が上がるか、または目的の設定より高い場合:
- エンジン出力をアイドルまで絞る
- 翼を水平にする
- TCを参照して均衡のとれたエルロンとラダー調整を用いてバンクを修正する
- 滑らかなバックエレベータ圧力を加えて、飛行姿勢を水平に上げる
- バンクを減らさずにピッチ姿勢を増やすと、飛行機のGが過剰になる
- 本能的な反応は、コントロールを引き戻すこと
- その代わり、飛行機に過度の負荷を与えないように、機首を滑らかに上げる
- バンクを減らさずにピッチ姿勢を増やすと、飛行機のGが過剰になる
- 指定された順序で、リストを手順通り実行する必要がある
- よくある間違い:回復操作中に不適切なコントロール手順を使用してしまう
- 回復操作を開始する前に、計器の指示を正確に解釈する
- 回復手順を順に実行する
- コントロール量は大きい場合もあるが、スムーズで積極的かつ迅速な調整が必要である
- 初動の操作が入力された後は、適切な修正を行うために高速でクロスチェックを続けること
- 均衡のとれた直進飛行は、ALTとASIの針が止まりつつあるか反対方向を示しつつある
- 対気速度が通常速度に戻る場合は、巡航用のエンジン出力に設定する
- よくある間違い - 水平飛行の姿勢を逸脱してしまっても計器表示に基づいてそれを認識できない
- AIを用いる場合、TC内の小型模型飛行機が水平になると水平飛行の姿勢と読み取れる
- AIを用いない場合、ASIとALTが反転して安定することで水平飛行であると読み取れる
部分計器表示による回復
- TCを使用して旋回を停止し、Pitot Static System(ピトー静圧系)の計器類を使用して意図しない上昇/下降を停止させる
- ASIとALTの方向を停止し、また逆方向に進み始めるのは、水平飛行を逸脱していることを示す
- エレベータを使用してピッチを維持し、計器を安定させ、再び修正するための時間を設定すること
回復操作中の均衡のとり方
- AIとTCを確認して、均衡のとれた直線飛行(翼は水平、ボールは中央)を決定する必要がある
- Slip/Skid(横滑り/ずり滑り)の感覚は、空間識失調を容易に悪化させ、回復を遅らせる
- 機首が低い状態からの回復操作には過剰なGがかかる
完成基準
操縦士は方位磁針の偏差を補い、それを用いて様々な機首方位に向かって飛行することができます。
よくある間違い
- 異常な飛行姿勢を認識できない
- 計器の指示ではなく「体幹」によって異常な飛行姿勢からの回復を試みる
- 復行中の不適切な操作入力
- 計器の表示から、機体の姿勢が水平飛行から逸脱を始めていることを認識できない
成功のポイント
本レッスンの各項目をレビューすること
異常姿勢から回復するときは、対気速度計、高度計、旋回釣合計、機首方位計、昇降計を使用して状況を判断し、姿勢指示器を無視します。 機体の損傷や状況の悪化を防ぐためにも、回復は迅速かつ正しい順序で行われる必要があります。 水平飛行が達成されたら、機体姿勢を直線水平飛行に再設定する必要があります。
レビュー
- 異常な飛行姿勢の移行に寄与する条件または状況について
- 機首上げと機首下げの異常な飛行姿勢から回復するための全計器表示盤の使用手順と部分的に使用する手順について
参考資料
- FAA-H-8083-9
- FAA-H-8083-15
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