ホールディング・空中待機
基礎知識
航空機は、車のように道端に止める事ができないため、空中で待機するためにホールディングと呼ばれる手順が使われます。 目的地の空港での渋滞、天気、滑走路の閉鎖、管制塔の無い空港へのIFR進入中の他の航空機など、航空機がホールドを要求される可能性があるさまざまな理由があります。ホールディングとは、航空機を特定の保護空域内に一定期間維持するために使用される所定のIFRの操作・手順です。
Standard Holding Pattern(標準ホールディングパターン)
- スタンダードホールディングパターンの形はレーストラックと同じである
- ホールディングをする際は、Holding Fix(フィックス)へ向かうインバウンドコースをたどり、右に180°旋回、1分間アウトバウンド(反対向き)をインバウンドに平行する形で飛行し、再度右に180°旋回。そしてまたHold Fixへのインバウンドコースに乗る。
- 標準ホールディングパターンは右旋回
- 非標準ホールディングパターンは左旋回
- この際は、必ずATCからの指示がある
ホールディングのATC指示
- もし次のATCクリアランス(管制許可)を指示されるよりも先に、機体が前のクリアランスリミットで指示された地点に到達してしまった場合、ATC(Ait Traffic Control:航空交通管制)は操縦士に対して下記内容を予想する:
- 最後に許可された高度を維持
- 公示されたホールディングパターンに従ってホールドを開始
- ホールディングパターンが公示されていない場合、その地点に達するまでのコースをインバウンドとして利用してホールディングパターンに入る
- 即座に次のATCクリアランスを要求する
- ホールディングパターンがチャート上に描かれていない場合、ATCクリアランスは以下を指定する:
- 基本コンパスポイント(N、NE、E、SEなど)で示される、ホールディング地点からのホールドの方向
- ホールディングフィックスの名前
- 航空機がホールドを行うRadial、Course、Bearing、AirwayまたはRoute
- DME(Distance Measuring Equipment:距離測定装置)またはRNAV(Area Navigation:広域航法)を使用する場合は、Leg (区間) の長さ (Mile表記)
- 左旋回の場合、方向
- EFC (Expect Further Clearance) までの時間、および関連する追加遅延情報
ナビゲーション・航行機器
- ホールドに使用する航行・ナビゲーション機器は、各ホールドによって指定されている
- ホールドをVORを基準に行う場合は、VORの周波数を合わせ、IDチェックを行う
- OBSセレクターでインバウンドコースを選択
- ホールドをVORからのDME距離を基準に行う場合 は、VORの周波数を合わせ、IDチェックを行う
- ホールドを行うRadialを設定し、その上を飛行して辿った上で、指定のDMEに達した場所でホールドを開始
- ホールドをVORを基準に行う場合は、VORの周波数を合わせ、IDチェックを行う
ホールディングの速度
- 0~6000フィート:200ノット
- 6001~14000フィート:230ノット
- もしかすると210ノットの速度制限有り
- 14000フィート以上:265ノット
- もしかするとホールディング中の速度は175ノットの制限有り
ホールディングへの入り方の基礎
- 先ずは、ホールディングフィックスへ到着時間3分以内に、対気速度をホールディングスピードに下げること
- これにより、ホールディング空域の制限を超えることを防ぐ事ができる。
Parallel Entry(パラレルエントリー)
- 上記の図上、青色のエリアからHolding Fixに接近する場合:
- 約1分間、ノンホールディング側でアウトバウンドのホールディングコースと平行なHDGに飛行
- その後、ホールディングパターンの方向に向け、180°以上の旋回を行う
- その上、Fixに直接戻るか、それよりも手前でインバウンドコースに乗る
Teardrop Entry(ティアドロップエントリー)
- 黄色のエリアからHolding Fixへ接近する場合:
- Fixに到着着次第、コースガイダンスを使用して(利用可能な場合)アウトバウンドに向け飛行、またはHDG 30度(ホールディングサイドへ向けた旋回)の、ティアドロップエントリーを行い、約1分間飛行する
- 次に、ホールディングパターンの方向を向いて、インバウンドホールディングコースをインターセプトする
Direct Entry(ディレクトエントリー)
- 上図オレンジのエリアからHolding Fixへ接近する場合:
- 直接Fixに飛び、ホールディングパターンに従って旋回する
ホールド進入・ホールド中の旋回
- エントリー中、およびホールド中の全ての旋回は下記条件を満たすこと
- 1秒あたりHDG 3°の旋回率
- バンク角30°、またはそれ以下
ホールディングフィックスへの到着の認識
- ホールディング位置がVOR上の 場合 、To / Fromの表示が切り替わるタイミングで、ホールディングフィックスに到達したということになる
- ホールディング位置がDME距離の場合は、表示された距離が希望の距離を示した時点で、ホールディングフィックスに到達したということになる
- 到着後は、直ちにエントリーを始めるためのターンを始める事
- 遅延なく、直ちにエントリーする
タイミングの取り方
- ホールディングパターンへの進入を完了させた上で、最初のアウトバウンドレグにおける飛行時間は、高度14,000フィート以下の場合、1分間
- 14000フィート以上の場合は、1分30秒
- 適切なインバウンド時間(1分もしくは1分30秒)を達成する為、アウトバウンドのタイミングを必要に応じて調整する必要がある
- アウトバウンドのタイミングスタート地点は、フィックスの上空通過もしくは90度通過のどちらか後に来る時点となります。
- VOR使用の場合、アウトバウンドは、To / Fromが反転したときにアウトバウンドタイミングが始まる
- Airwayのインターセクションの場合:往路のタイミングは、インバウンドからアウトバウンドへの旋回の終了時に始まる
- (注)空路のインターセクションの場合、90度ポイントは、VORのように気道の交差点から測定することはできない
- Compass Locatorの場合:アウトバウンドタイミングは、ADFの針が90°ードリフト補正されたときに始まる
- 上記のいずれも、アビーム位置がはっきりしない場合は、アウトバウンドの旋回が完了したときに計時を開始する
風の修正
- ホールディング中は、旋回時を除き、その時受ける風の影響を考慮し修正し続けること
- アウトバウンドのタイミングと角度を修正し、インバウンドの時間を丁度1分になるよう調節する
- アウトバウンドにドリフト補正(HDG) を適用し、さらにそれを用いることでインバウンドの進路 (コース) も維持できるよう微調整する
- アウトバウンドの補正角度を3倍にするのがポイント
- 例えば、インバウンドコースの風の角度修正がHDGで4度の場合、アウトバウンドでは3倍の12度のHDG修正を行う
- アウトバウンドの補正角度を3倍にするのがポイント
DMEを使用したホールディング
- 距離を時間の代わりに使用する以外は、同じホールディングの入り方と手順
- アウトバウンドレッグの長さはコントローラーによって指定される
- 長さはDMEの読み値によって決まる
管制との交信不通への対処 - §91.185
- クリアランス制限地点の発ち方
- クリアランス制限地点がアプローチが始まるフィックスである場合
- EFC時間が発行されている場合は、発つタイミングを可能な限りEFC時間に近づける
- EFCが発行されていない場合は、フライトプラン上で計算したETAにできるだけ近ずけて発つ
- クリアランスの制限地点が、アプローチの開始地点ではない場合
- EFC時間にできるだけ近い時間にフィックスを発つ
- EFC時間が発行されなかった場合は、アプローチが始まるフィックスへ出発し、そのフィックスをフライトプランで計算されたETAにできるだけ近い時間にアプローチを開始
- クリアランス制限地点がアプローチが始まるフィックスである場合
完成基準
- ホールディングの指示に基づいてホールドを描き、ホールドに入る為に必要なエントリー方法を選択する上実行し、ホールドを維持する上で、風と時間に必要な修正を加えることができる。
よく有る間違い
- 航行・ナビゲーション機器の設定が間違っている
- 不適切な高度、対気速度、およびバンク角の管理
- 不適切なタイミング
- 不適切なウィンドドリフト補正
- ホールディングフィックスの通過の認識を忘れる
- ATCの指示に従わなかった
成功のポイント
- 航行・ナビゲーション機器の設定
- 飛行する航空機と高度に適した速度の要件とその保持。
- ホールディングフィックスへの到着の認識とホールディングエントリーの迅速な開始。
- タイミングの取り方の手順
- 風によるドリフトの補正。
- ホールディング中のDMEの使用。
- 航空管制・ATCへの報告要件を満たす。
- ディスプレーが取り付けられている場合、ホールド中に自分の飛行経路に対する位置を監視する。
参考資料
- 14 CFR PART 91
- FAA-H-8083-9
- FAA-H-8083-15
- AIM
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