航空管制クリアランスとコンプライアンス
基礎知識
管制との交信は、IFRの飛行の大基盤となる基礎の一部です。これは、外の視野が制限された中での運航の為、ATCとのコミュニケーションは安全運航上、不可欠になります。このセクションでは、IFRにおいての無線交信のパイロットと管制官の任務と責任を説明します。また、全IFRフライトに必要な、IFRクリアランスの形式、また最後に、フライト用に通信とナビゲーション・機器の効率的な設定方法について説明します。最終的に、ATCとのコミュニケーション、IFRクリアランスとそのリードバック・復唱のやり方を理解しましょう。
航空管制許可・ATCクリアランス
- ATCクリアランスとは、航空機が制御空域内で一定の航空交通状況において運航する上で、他の航空機との衝突を防止する為、間隔を保つための許可のことである
操縦士と管制官の任務と責任
Pilot(操縦士)の任務・責任
- 操縦士は、ATCクリアランスの受信する際、理解をしたうえで承認すること
- 操縦士は、ATCが操縦士に向けて発行した、すべてのホールドショート・クリアランスの復唱すること
- 操縦士は、クリアランスが十分に理解できない場合、クリアランスの再確認または修正を要求すること
- 安全性の観点から許容できないと判断する場合も同様
- 緊急事態に対処するために必要な場合を除き、ATCクリアランスの受信と同時に速やかに遵守する
- クリアランスからの逸脱が必要な場合は、できるだけ早くATCに通知し、修正認可を取得する
- PIC (Pilot in Command:機長) は、航空機の運航について直接責任を負い、最終的な権限を有する(§91.3)
- 緊急時には、PICは安全性を維持するために必要な範囲で14 CFRから逸脱し、要求された場合には、管理者に書面による報告を送信する
- IFRで運航にも関わらず、VMC (Visual Meteorological Condition:有視界気象条件、VFRとは異なる点に注意) で飛行時は常に、トラフィックの確認と回避はパイロット任務となる
- 更に、IFRで管制空域内において飛行機を運航(§91.173)するにあたって、以下の2件を操縦士の責任において行う必要がある
- IFRフライトプランの提出
- ATC認可の取得
Controller(管制官)の任務・責任
- 運航に適切な、ATCクリアランスの発行する
- IFRクリアランス上で、制御空域のIFRの最低使用高度より上の高度を航空機に割り当てる
- 確実に操縦士がクリアランスを受信した事の確認と、復唱の確認
- 不正確、聞き取りにくい、または不完全なクリアランスの訂正と修正
Tower En Route Control(タワーエンルートコントロール)の任務
- 空域によっては、2つ以上の制御空域(クラスDの、やや小さめの空域)が隣接されている場合があり、空域同士のエンルート管制、進入管制がお互いに委任されている空域を指す
- ATCプログラムとは、隣接のオーバーラップレーダーサービスを使用してIFRクリアランスを提供することを指す
- 特徴としては2点あり、一つ目は、アプローチ管制やディパーチャー管制ではなく、名目の通り、タワーによって管制が行われる
- 二つ目の特徴は、通常、高度10,000フィート以下で運航する場合に限る
- 利点
- トラフィックの流れを促進し、航空機の管制、および管制との交信の要件を軽減するように設計されている
- フライトプランのファイリング短縮、遅延の減少、航空機のトラフィック分離要件が軽減される
- 計器進入も含めたIFR飛行が完全に、ターミナル空域内で行われることができる多くの場所がある
- Tower En Route ControlのルートはChart Supplementに表記されている
- Tower En Route Controlを使用する操縦士は、フライトプランをファイルする際に、ルートコードを備考欄に含める必要がある
Clearance Void Time(クリアランス無効時間)
- 管制塔のない空港から航空機を運航する場合、特定の時間までに空中に飛ばない場合にはクリアランスを無効にすることを規定したATCクリアランスを受け取ることができます。これを、クリアランス・ボイドタイムという
- 指定されたボイドタイムより前に離陸が行われなかった場合には、出発の許可が自動的に取り消される事を前提にしたATCクリアランスが行われる
- また、指定されたボイドタイムまでに離陸できなかった場合は、ATCに通知する必要がある
- この際、新しい許可を取得するか、IFRフライトプランを修正またはキャンセルする必要がある
- 上記のボイドタイムに加えて、ATCは通常、パイロットが離陸しなかったことをATCに通知しないといけない制限時間もクリアランスの一部に入る
- クリアランス無効時間後30分以内にATCに連絡しなかった場合、捜索および救助が始まる
- クリアランスが発行された空港周辺の別の飛行機のIFR飛行は、クリアランスが発行された航空機がATCに連絡するまで、またはクリアランス無効時間の30分後まで制限が掛かる仕組み
- クリアランス無効時間以降に離陸する飛行機には、他のIFRで飛行中の航空機との管制上の分離は無いと見なされ、§91.173(管制制御空域にてIFR飛行をする前にクリアランスを取得する義務)の違反になる可能性がある
IFR クリアランス
- ATCクリアランスは、Clearance Deliveryが利用可能な場合、Clearance Deliveryから発行されます。それ以外の場合、Ground Controlがこれを担当する
- クリアランスを受ける準備が整ったら、 "Ready to copy IFR" ・「IFRをコピーする準備ができました」と、管制に通知すると、コントローラから、次のようなクリアランスが与えられる
CRAFT・クラフト
- Clearance Limit・クリアランス制限
- 場合によっては、ターミナルエリア内またはターミナルエリアのすぐ外側にあるフィックスへの近距離クリアランスがあり、この場合、長距離クリアランスがその地点で申請・受信できる周波数が言い渡される
- Route・SID/標準出発方式を含むルート
- 通常は ”as filed”・「提出されたプラン通り」ですが、既存するフローパターンまたは優先ルートによっては、変更される可能性がある。ルートを飛行できない場合には、操縦士は、ATCに通知する責任がある。例としては、ルートを飛行するにあたって、ナビゲーション・航行機器が信号を受信できない場合など
- Altitude・初期高度
- 例外として、Cruise・クルーズクリアランスは、維持する高度の代わりに、最低IFR高度から巡航高度まで、空域ブロックを割り当てるクリアランスがあり、このブロックの範囲内では、上昇、降下およびレベルオフはパイロットの判断に任される。一旦降下を開始してATCに一定の高度を離れると報告した場合、追加のクリアランス無しには、前の高度に戻ることはできない
- Frequency・周波数 (出発管制)
- Transponder・トランスポンダーコード
- アサインされる可能性のある出発方式や、ルートの変更などは、クリアランスをリクエストする前に知っておくと、スムーズにクリアランスが貰えると考えられる。通常、クリアランス制限地は目的地の空港である。 ルートはパイロットがファイルした物で、他の航空機のクリアランスを聞いていると、現在使用されている出発方式 /初期高度/周波数がわかる
Read Back(クリアランスの復唱)
- 上記で言い渡されたクリアランスをATCに復唱する
- 聞き逃したと思う部分は、どんな小さな事でもATCに問い合わせる。もしエラーがあれば、エラーを修正し、確認のためにエラーのあった項目をもう一度ATCに復唱する。
- "Read back correct"「復唱確認」と、ATCから返答を得るまでは、クリアランスの正確さを確認した事にはならない
- 復唱を終えた時点で、クリアランスの受け入れという意味では無い点に留意する
- AIMパイロットコントローラ用語集を使用し、適切なATCフレーズを使用すること
ATC クリアランスの解釈、確認と変更
ATC クリアランスの解釈
- クリアランスで管制から何を言われるかを知っておくこと
- パイロットコントローラ用語集に出てくる用語
- 経路上の航行施設、経由地などの途中位置の名前
- CRAFT
- 出発方式(ファイルした物に限らず他の出発方式も含めて)の名前と、その中に出てくるトランジションやフィックスの名前
ATCクリアランスの確認と変更
- クリアランスを承認した後は、ATCの指示に従うこと
- 受け取ったクリアランスとは異なる許可を要求することができる
- クリアランスが十分に理解されていない、または安全でない場合は、確認/修正をATCに依頼
- クリアランスが危険と考えられる場合、認可の変更を要求する責任はパイロットにある。
通信とナビゲーション機器の周波数設定
- 承認したATCクリアランスに従い、最初に全ての無線周波数、航行周波数を設定すると、よりスムーズなフライトが可能
離陸前の無線の設定例
- COM 1:出発に使用する周波数
- タワーをアクティブ周波数、出発管制周波数をスタンバイにセットする
- COM 2:到着に使用する周波数
- HDGバグを、アサインされた出発HDGにセットする
- ALTバグを、アサインされた高度にセットする
- 割り当てられたルート、DPを含むすべてのウェイポイントをGPSに入力した後再確認し、GPS内のフライトプランをアクティブにする
- プライマリナビゲーションシステム(GPS)を使用し、1番最初に使用するVORステーションの周波数/ IDを確認する
OBS(Omni Bearing Selector)をアサインされたコースに設定
- NAV2を、IMCで出発空港に緊急に戻る場合に使用するアプローチ(例えば、ILS)の周波数に設定する
- 割り当てられたコードが設定されているか、トランスポンダをチェックし、離陸の準備ができるまでSTBYモードにする。その後、離陸の前にALTモードに切り替える
完成基準
ATCとの交信、IFRクリアランスのフォーマット、およびIFRクリアランスの取得方法を理解している。
成功のポイント
- 操縦士と管制官の交信においての重要点は、タワー、エンルートコントロールの役割の理解。場合によってはクリアランスボイドタイム(クリアランスが無効になる指定時間)が含まれるという事の理解。
- ATC許可を正確に、また、敏速に書き留める。
- クリアランスを遵守する能力。
- ATCの標準語で、ATCクリアランスを正確に、敏速に読み返す。
- ATC許可の解釈を正しく行い、必要に応じて説明、確認、または変更を要求する。
- ATC認可に応じた通信周波数、およびナビゲーション周波数の設定をする。
参考資料
- 14 CFR PART 91
- FAA-H-8083-15
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