計器飛行の基本姿勢
基礎知識
このレッスンでは、基本的な計器飛行の姿勢に関する要素を紹介し、外部の視覚情報を参照せずに飛行機の制御を円滑に行えることを目的としています。計器飛行の基本姿勢とは、外部の視覚情報よりも計器類を用いて航空機の空間位置を制御するものと定義されます。操縦士の計器飛行スキルはこの制御がどれほど行えるかによります。
Control & Performance(操作&性能)
- 航空機のパフォーマンスは、機体の姿勢とエンジン出力であるパワー(AOA - Angle Of Attackと抗力に対する推力)を制御し、また望ましい結果を引き出すことによって達成される
Pitch(ピッチ)+ Power(パワー) = Performance(性能)
- 計器の一般的なカテゴリーは、コントロール、パフォーマンス、ナビゲーションの3つである
Control(コントロール)
- 姿勢とエンジン出力の情報が表示されると、ただちに正確な調整ができる
- コントロールは、姿勢指示器とエンジン出力計器を参照して決定される
Performance(パフォーマンス)
- 航空機の実際のパフォーマンス(性能/操作による結果)を示す
- 性能は、高度計(AI)、対気速度計(ASI)、昇降計(VSI)、機首方位計(HI)、旋回釣合計(TC)を参照して決定される
Navigation(ナビゲーション)
- 選択したNAVAID施設またはポイント(fix)に関する位置を表示する
- コースインジケータ、有効範囲インジケータ、グライドスロープインジケータ、および指示点によって決定される
手順
設定
- 目的のパフォーマンスを実現するコントロール計器への姿勢/エンジン出力設定を確立する
- 既知または計算された姿勢変更とおおよその出力設定により、ワークロードを軽減させること
トリム
- 操縦桿の圧力が緩和されるまでトリミングする
- これは、スムーズで正確なコントロールに不可欠な設定で、他のタスクに注意を向けることができる
クロスチェック
- パフォーマンス計器をクロスチェックして、目的のパフォーマンスが得られているかどうかを確認する
- 表示と解釈を含む
- 偏差が記録されている場合は、必要な補正の大きさと入力方向を決定すること
調節
- 必要に応じて、コントロール計器の姿勢やエンジン出力設定を調節すること
設定
- コントロール計器は、ピッチとバンクの姿勢を設定するために必要である
- 航空機の姿勢制御は、AI(Attitude Indicator:姿勢指示器)を適切に使用して行う
- ピッチやバンクのいかなる変更を即座に、直接示す
Pitch Control(ピッチコントロール)
- 水平線に対して正確な量でピッチ操作を入力することにより姿勢が変化する
- 変更の量は”度”または目盛り幅で計測される
- 目的の偏差の量が補正の大きさを決定する
- 変更の量は”度”または目盛り幅で計測される
Bank Control(バンクコントロール)
- バンク調節は、バンクに対して正確な量のバンク姿勢を変えることによって変える
- 通常は30度を超えないバンク角度を使用する
Power Control(パワーコントロール)
- スロットル調整とエンジン出力インジケータへの参照によって行われる
- パワーの設定を一定に保つには、少し注意を払う必要がある
- 経験により、スロットルレバーの操作量が、どの程度をエンジン出力を変更するのかわかる
- 主にスロットルの動きでパワーを変更し、計器をクロスチェック
- パワーの設定中、計器だけを注視しないこと
- 主にスロットルの動きでパワーを変更し、計器をクロスチェック
- 良く有る間違い - AIを参照せずに制御入力を適用
トリム
- 手放しで操縦できるよう、機体の姿勢をトリム(調節)する
- よくある間違い:トリムを取らず、操作量が過剰/不足しがち
- よくある間違い:わずかなトリムを頻繁に調整しがち
計器クロスチェック
- 姿勢とパフォーマンスに関する計器を、継続的かつロジカルに監視する
- 操縦士は、所望のパフォーマンスを得るために計器情報を参考にして姿勢を維持する
- 姿勢を確立し、長時間一定のパフォーマンスを維持することは不可能である
- そのため、常に計器をチェックし、適切な変更を行う必要がある
クロスチェックの種類
- 放射状クロスチェック方式の場合
- 姿勢インジケータに基づいて行うこと
- 目線は計器同士を直接行き来するのではなく、AIを基点に移動する
- 姿勢指示器から始め、計器をスキャンしてAIに戻り、次に進む
- 逆Vクロスチェック方式の場合
- AIからTC (Turn Coordinator:旋回釣合計)、次にAI、そしてVSI (Vertical Speed Indicator:昇降計)、およびAIという順による目線移動
- 長方形クロスチェックの場合
- 上の3つの計器を視界に収めて、次に下の3つ計器を同様にスキャンする
- この方法は、操作の重要性に関係なく、各計器に同じ比重で目を配ることができる
- しかし、この方法を使うと、操縦に直接関係のある重大な計器に目線を戻すまでの時間が長くなる
- クロスチェックとバンク
- 設定後、HI(Heading Indicator:機首方位計)とTCを確認して、飛行機が必要なパフォーマンスを発揮していることを確認する
- クロスチェックとピッチ
- 設定後、ALT(Altimeter:高度計)、VSI、およびASI(Air Speed Indicator:対気速度計)を確認して、飛行機が必要なパフォーマンスを発揮していることを確認する
クロスチェックエラー
- よくある間違い -固定(FIXATION)
- 単一の計器に目線が集中してしまう(最も一般的なのはAI)
- これは、さまざまな理由で発生し、他の重要な計器のクロスチェックを頭から追いやってしまう
- よくある間違い-省略(OMISSION)
- クロスチェックから特定の計器を省略してしまう
- 姿勢の変化に伴う主要な計器表示を予測できなかったことが原因と考えられる
- よくある間違い -強調(EMPHASIS)
- 必要な計器の組み合わせから情報を読み取るところが、一つの計器だけ強調されてしまうこと
- 一般的にはVSIの針が上下に振れるのを追いかけてしまう、またはピッチやバンクの計器が強調されてしまう
- 操縦士は自身が最も理解している道具に頼る傾向があるのかもしれない
計器の解釈
- 各計器の構成と動作原理を理解し、適用すること
- よくある間違い - VSIを追いかけてしまう傾向は瞬時に情報を読み込んでしまうためだと思われる
- 航空機の性能を学習するに従い、計器の指示は航空機の姿勢に関して適切に解釈される
- ピッチを決定する場合、ASI、ALT、VSI、AIは必要な情報を提供する
- バンク姿勢を定めるには、HI、TC、AIを解釈しなければならない
- 各操作に対して、期待するパフォーマンスと、航空機をコントロールするために解釈する計器の組み合わせを学習すること
調節
- AIに関して必要な調整を行い、再度手順を実行する
- 必要なパフォーマンスからの偏差量によって、必要な修正量が決まる
- 姿勢指示器を1バーまたは1/2バーの上下幅に制限する
- 30度を超えないように旋回に必要なおおよそのバンク角度を使用する
- よくある間違い:計器の誤った解釈と誤ったコントロールによる修正
- 例:ラダーを用いた機首の修正
Straight & Level Flight(直進&水平飛行)
- 設定 - 姿勢指示器を使用して、水平姿勢を維持し、機首が水平になるように必要に応じてパワーを調整する
- トリム - トリムにより操縦桿の圧力を軽減させる
- クロスチェック
- 調整 - 必要に応じてパフォーマンスエラーを修正し、飛行機を再トリムし、改めてクロスチェックを行う
Constant Airspeed Climb(定速上昇)
- 設定 - 航空機の機首を、希望の上昇速度に対応したピッチ姿勢に合わせる
- 対気速度が目的の上昇速度に近づいたら、上昇設定(フル)にパワーを設定する
- トリム-トリムにより制御圧力を軽減
- クロスチェック
- 調整 - 必要に応じてパフォーマンスエラーを修正し、飛行機を再トリムし、改めてクロスチェックを行う
- 目的の上昇速度(1バーまたは1/2バー幅の動き)を維持するためにピッチの姿勢を調整する
水平移行
- 水平姿勢に移行するタイミングの高度を上昇速度の10%分リードして設定する
- 例:500 fpmの上昇率の場合、タイミングは目標高度に対して手前50’
- 同様に、機体を水平姿勢に取る
- 設定 - パワーを絞り、水平姿勢に対して滑らか、かつ継続的にエレベータに入力操作を行う
- クロスチェック - VSI、ALT、およびAIは、水平飛行を示す必要がある
- その後、飛行機をトリムし、直進水平飛行を維持する
Constant Airspeed Descent(定速降下)
- 設定 - 下降に対して所定の設定までエンジン出力を絞り、対気速度の低下に合わせて直進水平飛行を維持すること
- 対気速度が目的のレベルに近づくと、姿勢指示器で機首を下げて一定の速度を維持する
- トリム-トリムにより操縦桿の圧力を軽減させる
- クロスチェック
- 調整 - 必要に応じてパフォーマンスエラーを修正し、飛行機を再トリムし、改めてクロスチェックを行う
- 目的の上昇対気速度を維持するためにピッチ姿勢を調整する
水平移行
- 水平姿勢に移行するタイミングの高度を上昇速度の10%分リードして設定する
- 例:500 fpmの上昇率の場合、タイミングは目標高度に対して手前50’
- 同様に、機体を水平姿勢に取る
- 設定 - パワーを加えて、水平姿勢に対して滑らか、かつ継続的にエレベータに入力操作を行う
- クロスチェック - VSI、高度計、および姿勢市議機は、水平飛行を示す必要がある
- その後、飛行機をトリムし、直進水平飛行を維持する
機首方位への旋回
- 旋回開始前に、その方向と、必要なバンクの角度を決定する
- 30°を超えない範囲で、旋回に必要な適切なバンクを角度を使用する
- 設定 - AIに所望のバンク角を設定するため、均衡のとれたエルロンとラダー操作を行うこと
- トリム - 飛行機をトリムする
- クロスチェック
- 調整 - 必要に応じてパフォーマンスエラーを修正し、手順をを再実行する
ロールアウト
- AI上の翼を水平にするために、均衡のとれたエルロンとラダー操作を行うこと
- 旋回の量に応じて、目的の機首10度手前のタイミングでロールアウトを開始する
- 小さな旋回に対しては、バンク角度を1/2以下に設定する
- 水平飛行を維持するためにピッチを調整する
- 旋回の量に応じて、目的の機首10度手前のタイミングでロールアウトを開始する
完成基準
操縦士は、十分なクロスチェックを維持しながら、計器を参照して飛行機を円滑に操縦することができます。また飛行姿勢に必要な調整を行うことができます。
よくある間違い
- 計器のクロスチェック中に「固定」、「省略」、「強調」の精神的要因からくるエラーがある
- 不適切な計器の解釈
- 不適切なコントロール
- 高度、機首方位、または対気速度の修正中に、適切なピッチ、バンク、またはエンジン出力の調整を確立できなかった
- トリム手順の誤り
成功のポイント
上記のレッスン内容にかかるすべての要素についてレビューすること
参考資料
- FAA-H-8083-3
- FAA-8083-3-15
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