性能と制限
基礎知識
このレッスンでは飛行機の性能とその制限に関する要素を紹介します。POHの「パフォーマンスと制限」セクションには、航空機の性能データが含まれます。つまり、離陸、上昇、飛行範囲、耐久性、降下、着陸に関するデータです。安全で効率的な運転を行うためには、飛行機の性能データの使用が必須となります。
重量&バランスの決定
重心(CG) = 合計モーメント / 合計重量
- 何も搭載していない機体重量から確認を始め、飛行機に搭載されるすべての重量物のリストを作成する
- 人、物、燃料等(他の重量物にも注意)
- 搭載する重量が機体の最大重量制限内にあることを確認する
- 総重量が大きすぎる場合は、重量制限内に収まるように項目/人員を削減すること
- 各項目のモーメントを計算する
- モーメントを見つけるには、グラフを使用するか、POHを参考に機体各部のARM(支点から重量物までの距離)に重量を乗算する
- 飛行機の重量/モーメントは、重量&バランスの項目に記載されている
- モーメントを見つけるには、グラフを使用するか、POHを参考に機体各部のARM(支点から重量物までの距離)に重量を乗算する
- 次に、CGを計算する(合計モーメント / 合計重量)
- DA20の場合は、補足4にあるグラフの「合計重量」と「合計モーメント」を比較すること
- 補足4のグラフを使用して、飛行機が制限内かどうかを確認する
- DA20の場合は、補足4にあるグラフの「合計重量」と「合計モーメント」を比較すること
大気条件&パフォーマンス
大気圧
- 空気は軽いが質量を持ち、重力の影響を受け、力(圧力)を持つ
- 海面における標準的な条件では、平均圧力は約14.7ポンド/インチ
- 空気は気体(ガス)なので、圧縮や膨張による密度変化が可能である
- 空気の密度は飛行機の性能に大きな影響を与える
- 空気密度が高くなる(または低くなる)につれて、飛行機の性能も上昇(下降)する
何が空気密度(DA)を変化させるのか?
- 気圧、温度、高度、湿度が空気密度に影響する
- 密度は圧力と共に変化 - 圧力が増すと密度が増し、圧力が増すと密度も増し、圧力が減ると密度も減る
- 密度は温度と逆に変化 - 温度が上がると密度は減少し、その逆も然り
- 密度は高度と逆に変化 - 高度が高くなると密度は減少し、その逆も然り
- 密度は湿度と逆に変化 - 湿度が増すと密度は減少し、その逆も然り
- その理由は酸素分子(O2)が水分子(H2O)に置き換わっているためである。 水素は酸素よりかなり軽く、酸素を水素で置き換えると空気の密度が減少する
どのようにパフォーマンスへ影響が出るのか?
- 空気の密度が低くなるにつれて、性能は以下のように減少する
- 出力減少:エンジンに取り込まれる空気が減少するため
- エンジン出力は空気密度に比例する(密度が増すと、出力も増加する)
- 推力減少:プロペラは薄い空気では得られる推力効果が低い
- 推力は加速される空気の質量に比例して発生し、密度が低い空気は加速される空気の量が少ない
- 揚力減少:薄い空気が翼に作用する力が小さいため
- 空気密度が減少するにつれて、翼の揚力効率は減少する
エンジンの調整
- 75%未満のエンジン出力設定、または空気密度(DA)が5,000’を超える際の出力設定では、最大出力時にエンジン調整を絞る必要がある
- 過剰な混合気はエンジン性能を低下させる
- 高高度においては、高温が、安全操作を行えないDAに対して影響を与える可能性がある
- 低温でも湿度が高い状況においては性能は限界に近く、重量を減らす必要がある
パフォーマンスチャート
機体パフォーマンス
- POHのセクション5に記載有り(パフォーマンスと制限事項)
- パフォーマンスチャートとそれに付随する指示を使用して以下について計算できる
- 巡航性能
- 飛行機の設定に基づく失速速度
- 風のコンポーネント(横風と向かい風)
- 離陸距離と着陸距離
- 上昇パフォーマンス(巡航と離陸設定について、同様に着陸中止についても)
- 真対気速度
- 最大飛行時間(% bhp、KTAS、GPHを見つけるために、気圧高度とRPMを組み合わせたグラフ)
- これらのチャートを使用するには、気圧高度(PA)を知る必要がある
- Pressure Altitude - 圧力高度、高度計設定ウィンドウが29.92に設定されている場合に示される高度のこと
- PA = 1,000(29.92-現在の高度計設定) + 標高
- 例:[高度] = 30.42、[標高] = 808、PA = 308’
- 例:[高度] = 29.84、[標高] = 808、PA = 888’
- Pressure Altitude - 圧力高度、高度計設定ウィンドウが29.92に設定されている場合に示される高度のこと
- 圧力高度から密度高度を計算
- DA(空気密度):非標準温度に対するPAの修正(飛行機の性能に直接関係)
- (現在の気温 - 15oC)+ PA
- 例:Temp = 23℃、PA = 308’、DA = 1,268’
- 例:Temp = 03℃、PA = 308’、したがって、DA = -1,132’
- これは非常に良いDAの予測評価ではあるが、この計算は完全ではない
- PAを得たら、チャート下部の温度から計算を開始し、上部PAに移動します。
- そこから、グラフの次の段階に達するまで、まっすぐ横に移動させる
- 次のステップに進むと、トレンド線に従って、直進させる
- そこから、グラフの次の段階に達するまで、まっすぐ横に移動させる
- これは、パフォーマンス番号に達するまで行われる
取得出来得る要求パフォーマンスの決定
- パフォーマンスチャートを使用して、空港情報(滑走路の長さなど)に関連付けて計算及び意思決定を進める
- このチャートは、すべての飛行フェーズに対してパフォーマンス(性能)を提供する
- しかし、チャートはパイロットの熟達度や機械的な劣化を考慮に入れていない
- 飛行機の性能を制限するような要因はあるか?
- しかし、チャートはパイロットの熟達度や機械的な劣化を考慮に入れていない
- 天気が変わって元の計算が無駄になる可能性は常にある
- 飛行機が今うまく動くからといって、後でうまく動くとは限らない
- 先手先手のプランを持つこと!
機体限界を超えてしまう場合
動作限界
- POH第2章に掲載されている
- ここでいう限界とは、飛行機が安全に操作できる範囲内についてを指す
副作用(望ましくない効果)
- 十分な滑走路がない状態で離陸又は着陸を試みる場合
- 障害物に衝突したり、滑走路の距離以上に滑走をしてしまったり、飛行機に損傷を与える可能性がある
- 機体性能的にその重量では許されないにもかかわらず、障害物の回避を試みる場合
- これにより、かえって障害物に衝突する可能性がある
- 着陸予定の空港までの十分な燃料がない、または高出力での巡航を行う場合
- 緊急着陸という結果に陥る可能性がある
- 間違った種類の燃料を使用する
- デトネーションが発生し、エンジンに大きなダメージを与える可能性がある
- 重量過多またはCG限界超過による、構造または空力限界が制限を超えてしまう場合
- 航空機の損傷や構造の障害を引き起こす可能性がある
- 航空機の制御が妨げられ、失速速度が影響を受ける場合がある
- 最大横風成分(20ノット)を超える
- これにより、着陸の難易度が大きくなり、衝突が発生する可能性がある
- 航空機が滑走路に沿って飛行できない場合は、墜落、または着陸面を飛び出す恐れがある
完成基準
操縦士は、飛行における現状や期待される状況に基づいて飛行機の性能を計算し、その性能が受け入れられるかどうかを判断することができます。
成功のポイント
毎飛行前に、飛行機が空港や大気条件に応じて、必要な性能を発揮できる事の確認は非常に重要です。
以下についてレビューすること
- 重量とバランス条件の決定について
- 様々な飛行段階でのパフォーマンスを決定する際のチャート、表、その他のデータの使用について
- 飛行機の制限を超える際の効果について
- 大気条件が性能に及ぼす影響について
- 必要性能が航空機のパフォーマンス内にあると判断する際、考慮すべき要因について
参考資料
- FAA-H-8083-3
- FAA-H-8083-23
- FAA-H-8083-25
- AC 61-84
- POH/AFM