夜間運航
基礎知識
このレッスンでは、夜間運航に関連する要素を紹介します。夜間における機体操作は、機体操作とオリエンテーションといった要因から成ります。夜間飛行は、うっかり無視してしまうと危険な状況になる可能性のある多くのユニークな状況を示します。自分の目を正しく使うことを学び、自分の目の限界を知り、夜間視力をより効果的に使うことができます。
目の機能
錐体と杆体(Rods & Cones)
- 視神経を介して脳にメッセージを送信する2種類の光に敏感な神経終末細胞のこと
- 錐体細胞(Cone)- 対象の色、詳細、遠くの物体を捉える機能を担当する
- 錐体は網膜の中心にある
- 桿体細胞(Rod)– 周辺視界に何かが見られたときに機能し、薄明かりの下で視力を提供する
- 桿体細胞は錐体細胞(周辺視界)の周りにリング状に存在する
- 錐体細胞(Cone)- 対象の色、詳細、遠くの物体を捉える機能を担当する
- 錐体細胞と錐体細胞の両方が日中帯の視力機能に使用される
- ただし、通常の光がなければ、夜間視力の機能はほぼ完全に桿体細胞が担うことになる

錐体細胞(Cone)、桿体細胞(Rod)&夜間視力
- 錐体細胞(Cones)は網膜(すべての画像が集まる層)の中心にある

- 中心窩と呼ばれる小さな穴があり、ほとんどすべての光感知細胞が錐体細胞である
- これは、最も視力として機能する場所(視覚の中心)である
- 中心窩と呼ばれる小さな穴があり、ほとんどすべての光感知細胞が錐体細胞である
- 桿体細胞(Rod)
- 夜間視力機能を可能にする
- 昼間は、中心窩を使用して対象を直接見ることで像を捉えることができますが、夜間はその中心を外して対象を見るようにするとより効果的に見えるようになる
- 錐体細胞が機能するためには光を必要とし、十分な光がない場合(夜など)、錐体細胞は事実上「死角」になってしまう
- 桿体細胞は錐体細胞の周りに集中しており、薄暗い光の中で見るために使用される
- 錐体細胞は十分な光がある場合にのみ有用であり、桿体は中心窩の外側(視野の中心の外)にあるため、その中心から外れた視界が夜間飛行に使用される
- 他機を見つけようとするときは、直接それを見つめないこと。桿体細胞が対象を捕らえることができるように少し左または右に視線を外して見ること
- 桿体細胞は錐体細胞の周りに集中しており、薄暗い光の中で見るために使用される
- 錐体細胞が機能するためには光を必要とし、十分な光がない場合(夜など)、錐体細胞は事実上「死角」になってしまう
- 桿体細胞の問題は、大量の光がそれらを圧倒してしまうため、再び目が暗闇に順応するのに長い時間がかかることである
- 桿体細胞が暗闇に完全に適応するには、約30分かかる
- 桿体細胞を完全に調整されると、光に対して約100,000倍感度が高くなる
- 桿体細胞が暗闇に順応した後、光にさらされるとその順応プロセスは逆戻りしてしまう
- 目はほんの数秒で光に順応する
- したがって、飛行前と飛行中に明るい光(ライトなど)を避けることが重要である
- これが飛行中に赤い発光の懐中電灯が推奨される理由であり、これらは桿体細胞の暗順応を妨害しない
- 桿体細胞を完全に調整されると、光に対して約100,000倍感度が高くなる
- 桿体細胞が暗闇に完全に適応するには、約30分かかる
- 昼間は、中心窩を使用して対象を直接見ることで像を捉えることができますが、夜間はその中心を外して対象を見るようにするとより効果的に見えるようになる
総括
- 夜間視力は桿体細胞と中心から外れた視界に基づいている
- 夜間に対象物を直接見つめると、対象物の全体が見えなくなる可能性がある。これは、視覚の中心にある錐体細胞は、十分な光がなければ機能しないためである
- 適切な夜間視力を維持するために、飛行前および飛行中に明るい光を見ないようにすること
コックピット内の灯り
- コックピットの照明は、外部の視界を妨げることなく、計器とスイッチの読み取りを可能にする最小の明るさに設定する必要がある
見当識障害と錯覚
- 夜の錯覚は混乱を引き起こす可能性がある
随意運動(Autokinesis)
- 暗い背景に対して数秒以上光の1点を見つめることによって引き起こされる
- 光が自然に動いて見える
- さまざまな距離で対象に目を合わせることで凝視を防ぐ
- 目を動かし続け、周辺視界をオフセットして使用する
偽りの地平線
- 自然の地平線が不明瞭/すぐにはっきりしないときに発生する
- 明るい星と街の明かりを混同してしまう
- オリエンテーションを維持するために機内計器類を信用する
特徴のない地形
- 地面の特徴がないと、航空機が実際よりも高いという錯覚を引き起こす可能性がある
- これにより、通常のアプローチよりも低く飛行する傾向がある
滑走路の傾斜
- 上りに傾斜した滑走路/地形は、航空機が実際よりも高いという錯覚を引き起こす可能性がある
- これを認識しないパイロットは、より低い進入をしてしまう
- 下り勾配 – 上記と逆の状況が起きる
- 準備すること - チャートの補足を使用して、どの滑走路の傾斜が期待できるかを知る
地上の灯り
- 道路/高速道路などに沿って等間隔に配置されたライト。これらは滑走路灯のように見えてしまう
- 動く列車のライトが滑走路/アプローチライトと間違えらる
- 明るい滑走路または進入灯は、飛行機が滑走路に近いような錯覚を生み出す可能性がある
- 状況認識を維持することにより、こういった誤認を可能な限り少なくする
- 何を見るべきか(空港/滑走路の照明の種類)、どこを見るべきか、どこにいるべきか(航法図、GPS、ランドマークなどを使用)
- 飛行計器類を参照して姿勢を確認すること
- 飛行計器類の参照は、見当識障害/錯覚に対処するための最良の方法である
- 進入を行い、ILSまたはVASIが利用できる場合は、それを利用する
- 特に夜間は、できるだけ垂直方向のガイダンスを使用すること
- 進入を行い、ILSまたはVASIが利用できる場合は、それを利用する
- 飛行計器類の参照は、見当識障害/錯覚に対処するための最良の方法である
- 視覚的な参照は制限されている – 通常よりも頻繁に計器をスキャンすること
- 操縦士がいつでも自分の位置がわからない場合は、ゴーアラウンドを実行する必要がある
操縦士の装備
フラッシュライト
- 赤または白の光
- 白色光は航空機の出発前点検に使用する
- 夜間視力を損なわないため、コックピット操作を実行する際に赤色光のものを使用する
- 航空図で赤いライトを使用すると、図中の赤色が同化して見えなくなるので注意
航空図
- 目的の飛行経路がチャート端に近い場合、隣接するチャートが利用可能である必要がある
- 街の明かりは遠くから見ることができ、必要なチャートを用いないと混乱が生じる可能性がある
出発前準備(FAR 91.205)
VFR夜間運航に必要な装備類
- TOMATO FFLAMES (語呂合わせ)と FLAPS(語呂合わせ)
- Fuses (該当する場合):ヒューズ
- Landing Light:着陸灯
- Anti-Collision Lights:衝突防止灯
- Position Lights:位置灯
- Source of Power:電源
周囲点検
- プリフライト検査は依然必要な手順である
- 白色懐中電灯は点検に適している(コックピット内では赤色光の電灯)
- 機体に取り付けられたすべてのライトを確認する
- ランプ(機体の駐機場所含む周辺エリア)に障害物がないか確認すること
エンジン始動
- プロペラ周囲がクリアであることを確認すること
- 開始前に位置ライトと衝突防止ライトを点灯させること
- 「クリアプロップ」と声を出して周囲に宣言する
- バッテリーの消耗を防ぐために、すべての不要な電気機器をオフにすること
タキシング、空港オリエンテーション、ランナップ
タキシング
- 視界が制限されているため、タキシングの速度を下げる必要がある
- 「はっきりと見える距離内」で停止できる速度よりも速くタキシングをしないこと
- 必要に応じて着陸灯/タクシーライトを使用すること
- 他機の近くでストロボや着陸灯を使用しないこと
- これは他の操縦士の注意をそらし、目をくらませる可能性があり、マナー的にもとてもよくない
- 他機の近くでストロボや着陸灯を使用しないこと
オリエンテーション
- 空港図(常に1つあります)
- 誘導路の標示、照明、標識を理解する
ランナップ
- タクシー前のランナップは通常どおりチェックリストを使用して実行する必要がある
- 飛行機が前ぽへじわじわ動き出していてもは簡単に気付けない場合がある
- ブレーキをしっかり踏むか/パーキングブレーキをかけて、飛行機が気付かぬうちに進む可能性があることに注意する
- 飛行機が前ぽへじわじわ動き出していてもは簡単に気付けない場合がある
- 特に注意すること
離陸&上昇
離陸
- 接近する他機がいないことを確認する – ファイナルアプローチ
- 非管制空港:航空交通の方向に360°旋回して、ローカルエリアの安全を確認する
- 無線通信は必要ないが、何も聞こえないからといって、そこに誰もいないというわけでは無い
- 非管制空港:航空交通の方向に360°旋回して、ローカルエリアの安全を確認する
- クリアランスを受け取ったら、飛行機をセンターラインに合わせる
- 磁気方位計と機首方位計が目的の滑走路と一致していることを確認する
- 多くの視覚的な手がかりが利用できないので、計器に応じて通常の離陸を実行する
- 滑走路の幅、飛行機の速度、飛行姿勢の認識は夜間で変化する
- 飛行計器類は頻繁にチェックする必要がある
- 滑走路の幅、飛行機の速度、飛行姿勢の認識は夜間で変化する
- 対気速度がVRに達したら、通常の上昇を確立するようにピッチ姿勢を調整する必要がある
- 外部の視覚的参照(ライトなど)および飛行計器を参照すること
上昇
- 飛行機が上昇していることを確認するには、対気速度計、昇降計、高度計を確認すること。暗闇は外を見て上昇率を判断することを難しくする
- 必要な調整は、姿勢と方位の指標を参照して行う必要がある
- 安全な操縦高度に到達するまで、旋回を行わないこと
飛行中のオリエンテーション
チェックポイント
- 少ないが、問題ないはずである
- 街灯りのパターンから簡単に識別できる
- 回転ビーコンは便利である
- 車が走っている高速道路は通常、見やすい(ヘッドライト/ブレーキライトが見えるため)
- 場所について混乱して混乱しやすくなるため、方向を維持すること
- 位置、推定時間、消費燃料を継続的に監視すること
- NAVAIDS / GPSは可能な限り使用する必要がある
- 雲/制限された可視性
- 夜に雲を見ることは困難である– MVFR / IFR気象条件への飛行を避けるために注意するように
- 最初の兆候-地面が徐々に消え、ライトの周りが光る
- 保守的になり、反対側に飛び出すことを期待せず、雲の中を飛ぶのを避けるための行動を必要に応じて取ること
- 夜に雲を見ることは困難である– MVFR / IFR気象条件への飛行を避けるために注意するように
- ナビゲーションライト
- 左翼端が赤色、右翼端が緑色、尾翼が白色
- 自分の機体との関係で別の機体の方向を設定するために使用される
- 左翼端が赤色、右翼端が緑色、尾翼が白色
トラフィックパターン
滑走路と空港灯をすみやかに識別すること
- 空港や滑走路を見つけるのが難しい場合がある(特に都市内に埋設されている場合)。
- 滑走路の灯りが見つかるまでビーコンに向かって飛ぶこと
- 滑走路灯と方向指示器を比較して、正しい場所にいることを確認すること
- 可能であれば、滑走路へのコースガイダンス用にローカライザを調整するか、GPSのOBS機能を使用して、延長された滑走路の中心線を表示する
- 自分の方向を定め、状況認識を維持するために利用できる追加の手段を用いること
夜間帯においては距離感が異なる
- 地上参照点の欠如と、それらの場所および大きさを比較できないことは距離感を惑わせる
- 計器(特に高度計と対気速度計)にもっと信頼を置く必要がある
- 衝突回避のために着陸灯を点灯する必要がある
通常と同様にトラフィックパターンを飛行すること
- 滑走路/ホールドラインライトの場所を常に知る
- 進入時は、着陸前のチェックリストを完了するために十分な時間を見込むこと
- 日中と同じ方法でアプローチを実行すること
進入&着陸
- 日中と同じように安定したアプローチをする必要がある
- 飛行計器類をより頻繁に使用すること(特に高度計/対気速度計)
- 距離、高さなどが誤っている可能性がある
- 各区間の指定された対気速度を維持し、VSIを監視してアプローチを制御し続ける
ファイナルアプローチ
- センターラインライトがない場合は、飛行機をエッジライト間に置くよう飛ぶ
- パワーとピッチの修正を適用して、安定したアプローチを維持する
- アプローチライト(VASI、PAPIなど)を使用して、グライドスロープを維持する
- 追加のガイダンスに利用できる場合は、グライドスロープを調整する
ラウンドアウト(フレア)/タッチダウン(接地)
- スムーズで制御されたフレアとタッチダウンは、日中帯と同じ方法で行う必要がある
- 高さ、速度、沈下率の判断が損なわれる場合がある
- 多くの場合、高い位置でフレアに入りすぎる傾向がある
- 高さ、速度、沈下率の判断が損なわれる場合がある
- 着陸灯が滑走路上のマークを照らすくらいのタイミングで、フレアを開始することが望ましい
- 着陸灯がない、またはタイヤのマークが見えない場合は、遠端の滑走路灯が飛行機より高く上昇して行くように見える
着陸復航(Go Around)
- 視界が制限されているため、夜間には迅速な決定がさらに必要である
- 着陸復航の操縦が必要な場合に備えること
- 外部の参照点が不足している場合に備えて、計器クロスチェックに重点を置いて、通常どおりに着陸復航すること
夜間における緊急事態
電子装備
- 夜間飛行において、最大の電気的負荷がシステムにかかる=障害の可能性が最も高い
- 問題が疑われる場合
- 可能な限り負荷を軽減すること
- 完全な故障が予想される場合は、すぐに最寄りの空港に着陸すること
エンジン
- パニックにならないこと - 通常の滑空姿勢を確立し、空港に向かうか、混雑したエリアから離れる
- 原因を確認し、可能であれば直ちに修正すること(エンジン再起動チェックリスト)
- 再始動できない場合 – 常に飛行機の積極的な制御を維持すること!
- 風で方向を維持する - 他に選択肢がない限り、風下側に着陸しないこと
- 着陸灯を確認し、動作する場合は着陸時に使用すること
- 再始動できない場合 – 常に飛行機の積極的な制御を維持すること!
- ATC、UNICOM、および/または警備員に緊急事態を宣言すること(もしすでに通信可能な周波数にいる場合、指示がない限り変更しないこと)。
- 公共のアクセスに近い緊急着陸エリアを検討すること(誰も操縦士の救出に向かえないような場所に着陸しないこと)
- 着陸前のチェックリスト
- 最も遅い対気速度で着陸すること
- 着陸後、すべてのスイッチをオフにして、できるだけ早く避難すること
完成基準
訓練生は夜間運航に関わる要因を理解し、自信を持って安全に航空機を夜間に操縦できます。
成功のポイント
夜間運航は操縦士に独特の状況を提示し、オリエンテーションと安全を維持するための警戒を必要とします。 夜間飛行は本質的には危険ではありませんが、より多くの努力が必要になる場合があります。
本レッスンの各項目をレビューすること
- 暗視に関連する要因について
- 見当識障害と夜間の錯覚について
- 室内灯の適切な調整について
- 赤いレンズで懐中電灯を持つことの重要性について
- 夜間の飛行前点検について
- エンジン始動前のポジションライトと衝突防止ライトの使用など、それら手順について
- 空港でのタキシングとオリエンテーションについて
- 離陸および上昇について
- 機内のオリエンテーションについて
- 飛行計器を参照して機体の姿勢を確認することの重要性について
- 夜間における緊急時の手順について
- トラフィックパターンについて
- 着陸灯がある場合とない場合のアプローチと着陸について
- GO AROUNDについて
参考資料
- FAA-H-8083-3
- FAA-8083-3-25
- AIM
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