飛行機の操縦装置
基礎知識
本レッスンではプライマリフライトコントロール、セカンダリフライトコントロール、およびトリムについて紹介します。飛行機の姿勢(3つの軸を中心とした回転運動)は、主要なフライトコントロールの偏向によって制御されます。これらは、主翼の後縁部と垂直/水平尾翼に取り付けられたヒンジ付きの可動面から成ります。偏向すると、これらの表面は主翼または尾翼のキャンバーおよび迎角を変化させ、その結果として揚力および抗力特性を調整します。トリム制御は、制御圧力を緩和するために使用されます。 フラップは、高速の巡航速度と低速の着陸速度の間の妥協点を作成します。飛行機の機能と各制御入力が機体に与える影響を理解することで、制御方法を理解できます。 飛行機がどのように機能するかを理解することで、はるかに熟練した操縦士となっていきます。
全般
- 翼弦-翼の前縁から後縁まで翼型を通過して描かれる想像上の直線
- キャンバ–翼の上面と下面の特性曲線
- 上部のキャンバは通常より形状がハッキリしているが、下部は比較的なだらかである
- これにより、翼上面の空気流れ速度が下面よりも速くなる
- 上部のキャンバは通常より形状がハッキリしているが、下部は比較的なだらかである
- 上面が湾曲するほど、生成される揚力が大きくなる
プライマリフライトコントロール
- プライマリフライトコントロールは、飛行中の機体を安全に制御するために必要な操作系統である
エルロン(AILERON)
- 縦軸を中心とした機体のロールを制御
- スチール製プッシュロッドで操作される
- どのようにして動作するのか
- 補助翼は相互接続され、反対方向へ同時に作動しり
- コントロールを右に動かすと、右エルロンが上向きに、左エルロンは下向きに偏向する
- 上向きの偏向によりキャンバーが減少し、揚力が減少する
- 下向きの偏向によりキャンバーが増加し、揚力が増加する
- 左側の揚力が増加し、右側の揚力が減少すると、機体は右方向へロールする
- コントロールを右に動かすと、右エルロンが上向きに、左エルロンは下向きに偏向する
- 翼のバンクが揚力の水平成分を生み出すため、機体は旋回する
- 翼がバンクされると、揚力は水平成分と垂直成分に分解される
- 水平成分は機体を旋回させる
- 相対風の変化により、旋回中に垂直尾翼が押し出される
- 水平成分は機体を旋回させる
- 翼がバンクされると、揚力は水平成分と垂直成分に分解される
- 補助翼は相互接続され、反対方向へ同時に作動しり
アドバース・ヨー
- 下向きに偏向されたエルロンはより多くの揚力を生成するため、同様に誘導抗力も多く生成する
- この際に追加された抗力によって機首は、旋回中に高い側へ位置する主翼の方向へヨーイングしようする(アドバース・ヨー)
- 調整かつ均衡のとれた飛行を保つためにも、ラダーは必ず使用すること
- 必要な量は、低速、高AOA、およびエルロンの偏向が大きい場合に最大になる
エルロンの種類
- エルロンによる差
- エルロンは、下側よりも上側に偏向する方が長い距離をとるこれは下降する側の主翼に発生する抗力を増加させ、アドバースヨーを低減させる
- フリーゼ型エルロン
- 操作入力圧力かかると、持ち上げられている補助翼はオフセットヒンジを中心に旋回する
- これにより、エルロンの前縁が翼周りの空気流れに触れる形になり、抗力が発生する
- その結果、下側に偏向されたエルロンが生み出す抗力を均一化し、アドバースヨーを低減する
- スロット(隙間)が形成されているため、下側に偏向されたエルロン上部をスムーズに空気が流れ、また高い迎角でより効果的になる
- これにより、エルロンの前縁が翼周りの空気流れに触れる形になり、抗力が発生する
- 操作入力圧力かかると、持ち上げられている補助翼はオフセットヒンジを中心に旋回する
- 両タイプのエルロンだけで、アドバース・ヨーは解消されないため、依然として均衡のとれた操作入力が必要である
エレベータ(ELEVATOR)
- 横軸周りのピッチを制御する
- スチール製プッシュロッドで操作される
- どのようにして動作するのか
- 操縦桿を後方に引くと、エレベータ後縁部が上側に偏向する
- これにより、エレベーターのキャンバが減少し、下向きの空力が発生する
- 全体的な効果により、尾翼は下に向かって動き、機首は上に向かう(だいたいCG周りにおいて)
- その強さは、CGと水平尾翼面間の距離によって決まる
- 操縦桿を前方に移動すると、エレベータ後縁部が下側に偏向する
- これにより、エレベーターのキャンバが増加じ、より多くの揚力を生成する
- これは尾翼を上に動かし、機首を下に動かす
- これにより、エレベーターのキャンバが増加じ、より多くの揚力を生成する
- 操縦桿を後方に引くと、エレベータ後縁部が上側に偏向する
エレベータの種類
- T尾翼(T-TAIL)
- エレベータは通常、飛行中のプロペラからのダウンウォッシュと胴体と翼周りにおける空気流れによる影響の受けない位置にある
- これにより空中での操作においては、ほとんどの飛行状況で一貫した制御動作が可能になる
- 軽飛行機だけでなく、大型飛行機(エレベータの位置を排気口から離して設置する)や水上飛行機でも一般的な形である
- 低速では、従来の尾翼機と比較して、所定の量だけ機首上げを行うために、エレベータでより多くの角度をつける必要がある
- 従来のテールは、プロペラからのダウンウォッシュで機首上げの姿勢維持を補助する
- これにより空中での操作においては、ほとんどの飛行状況で一貫した制御動作が可能になる
- エレベータは通常、飛行中のプロペラからのダウンウォッシュと胴体と翼周りにおける空気流れによる影響の受けない位置にある
- スタビライザー(尾翼)
- 水平尾翼とエレベーターを組み合わせた可動水平面のこと
- 操縦桿を引くと、スタビライザーの後縁部が持ち上がり、機首はピッチ上げの姿勢になる
- 反対に前方に押し込むと、後縁部が下がり、機首がピッチ下げの姿勢になる
- アンチサーボタブが後縁部に組み込まれ、感度を低下させる
- このタブは、スタビライザーの後縁部と同じ方向に移動する
- アンチ・サーボタブの動きにより、スリップストリームに偏向される
- これにより、操縦士が機体に対して過度に操作入力をする必要がなくなる
- 操縦桿を引くと、スタビライザーの後縁部が持ち上がり、機首はピッチ上げの姿勢になる
- 水平尾翼とエレベーターを組み合わせた可動水平面のこと
ラダー(RUDDER)
- 垂直軸周りのヨーを制御する
- ケーブルで操作
- どのようにして動作するのか
- ラダーが偏向されると、水平方向の力が偏向とは反対方向に作用する
- つまり左ペダルを押すと、ラダーが左に偏向される
- これにより、垂直尾翼周りの空気流れが変わり、横方向の揚力が発生して尾翼が右側に移動し、機首は左側にヨーイングする
- ラダーをどちらかの方向に動かすと、キャンバーが大きくなるため、ラダー片側の揚力が大きくなり、さらに、ラダーを相対風に向かって押し込むと、機首を同じ方向に動かす力が生じる
- 速度が上がるとラダーの効果が上がる
- 低速では大きな偏向、高速では小さな偏向が必要になる場合がある
- プロペラ駆動の飛行機では、舵の上を流れる任意のスリップストリームがラダーの効果をより高める
- ラダーが偏向されると、水平方向の力が偏向とは反対方向に作用する
- ラダーの主な目的は、アドバースヨーを打ち消し、方向制御を得ることである
セカンダリフライトコントロール
- セカンダリフライトコントロールは、性能特性を改善するか、過度な制御を軽減する
- ウィングフラップ、トリムシステム
フラップ(FLAP)
- ほぼすべての飛行機で使用される最も一般的な高揚力装置のこと
- 各翼の後縁部に取り付けられ、特定のAOAの誘導抗力と揚力を増加させる
- 重要な機能
- 拡張/収縮することができるので、高い巡航/低い着陸速度の際にちょうどよい補助として機能することができる
- より遅い着陸速度が可能になり、着陸距離を短くすることができる
- 速度を上げずに急な下降角度を作ることができる(安全な障害物クリアランスを可能にする)
- 離陸距離を短くし、より急こう配の上昇性能を得るために使用できる
- プレーンフラップ(PLAIN FLAPS)
- 最も単純なタイプ
- キャンバーを増加させ、特定のAOAで揚力係数が大幅に増加する
- 抗力も大幅に増加し、圧力中心が後方に移動するため、機首が下がる
- スプリットフラップ(SPLIT FLAPS)
- 翼下面が偏向され、プレーンフラップよりもわずかに大きな揚力を生成する
- ただし、それによる後方乱気流のためより多くの抗力が発生してしまう
- ファウラーフラップ(FOWLER FLAPS)
- 翼のキャンバーを変更し、翼面積を増やすタイプのスロット付きフラップ
- フラップ自体が後方かつ下方向にスライドする
- このスライド拡張における最初の部分では、抗力がほとんど増加しないが、揚力を大幅に増加させる
- このスライドが続くと、フラップは下向きの位置へ下がり。揚力がほとんど増加せずに抗力が増加する
- 最小の抗力で最大の揚力を提供するが、ピッチングモーメントに最大の変化を生み出す
- スロットフラップ(SLOTTED FLAPS)
- 現在の航空機において最も一般的な装備
- 揚力係数をプレーンおよびスプリットフラップよりも大幅に増加させている
- 展開されると、翼とフラップ前縁の間にダクトが形成される
- 下面からの高圧空気流れがダクト経由で上面に送られ、上部境界層を加速することで剥離を遅らせ、CLを高める
- フラップコントロール
- 操縦士が手動、電動、または油圧で制御可能
- フラップは、電動による3ポジション操作スイッチ(例:ダイアモンド、シーラス、セスナ)または手動でレバーを引く(例:パイパーPA28)ことにより制御できる
- 操縦士が手動、電動、または油圧で制御可能
スポイラー(SPOILER)
- 翼に導入された高抗力装置により、翼表面上の滑らかな空気流れが損なわれ、揚力が減少し、抗力が増加する
- 用途
- 対気速度を下げる
- 抗力の増加により、飛行中の対気速度が急速に低下し、着陸時のグラウンドロールが減少する
- 着陸時、スポイラーを立てているため対気速度が低下し、揚力低下により重量が車輪によりかかるようになり、ブレーキ効果が向上する
- 抗力の増加により、飛行中の対気速度が急速に低下し、着陸時のグラウンドロールが減少する
- 降下率の増加
- 機体は対気速度を上げることなく、より速い速度で降下できる
- ロール制御
- 旋回時に、片翼のスポイラーが展開され揚力が低下、さらに抗力が生成される
- スポイラーが展開された翼は下方に下がり、機体はバンクとその方向にヨーイングの姿勢を取る
- アドバース・ヨーを排除
- 旋回時に、片翼のスポイラーが展開され揚力が低下、さらに抗力が生成される
- 対気速度を下げる
トリムコントロール(TRIM)
- トリムシステムは、機体制御への一定の操作入力圧を維持する力を軽減するために使用される
- これらは通常、コックピットコントロールと、主操縦翼の後縁に取り付けられた小さなヒンジ付きデバイスで構成されている
- トリムコントロールの位置を調整することにより、空気力学的に操作系の動きを補助し、作業負荷を最小限に抑えることができる
いかにしてトリムタブは作用するか
- 最も一般的な装備は、エレベーターの後縁に取り付けられた単一のトリムタブである
- 操作
- 垂直に取り付けられた小型のコントロールホイール(またはトリムクランク)を介して手動で操作する
- トリムタブがエレベータ表面において反対方向に移動する
- トリムをフルノーズダウンに配置すると、タブが最大のアップ位置に移動する
- タブが上の状態で空気流れ内を通過すると、尾翼周りの流れがエレベーターを押し下げる
- これにより、尾翼が上に移動し、機首が下がるピッチ変化が生じる
- タブが上の状態で空気流れ内を通過すると、尾翼周りの流れがエレベーターを押し下げる
- フルノーズアップ(機首上げ)位置では、タブはフルダウン位置に移動する
- 尾翼下面を流れる空気がタブに当たり、エレベーターを押し上げて、エレベーターのAOAを減らす
- これにより、尾翼が下に移動し、機首が上がるピッチ変化が生じる
- 尾翼下面を流れる空気がタブに当たり、エレベーターを押し上げて、エレベーターのAOAを減らす
機能
- 必要なパワー、ピッチ姿勢、構成を確立し、トリミングして操作入力圧を緩和する
- パワー、ピッチ姿勢、または構成が変更されたときはいつでも、最新の姿勢状態に合わせてトリミングを行うこと
バランスタブ
- 見た目も機能もトリムタブと同じではあるが、バランスタブは操縦桿に連結されている
- 操作入力されると、タブは自動的に反対方向に移動する
- 操舵面が偏向されると、タブが反対側に移動して荷重が緩和される
- 操作入力されると、タブは自動的に反対方向に移動する
- コックピットからリンケージによる調整可能な場合、タブはトリムとバランスの両方のタブとして機能する
アンチ・サーボタブ
- 感度を低下させ、制御圧力を緩和および維持するトリム装置として機能する
- 操作
- スタビライザーの後縁部分が上に移動すると、タブの後縁部分も上に移動する
- バランスタブと同じように機能するが、フライトコントロールと同じ方向に移動する(反対方向ではない)
- スタビライザーの後縁部分が上に移動すると、タブの後縁部分も上に移動する
地上調整可能タブ
- トリムの空力を得るために、機体が地上にある間、どちらかの方向に曲げて調整するタイプの金属トリムタブ
- どれくらい偏向を加えればよいのかについては試行錯誤で発見される
調整可能尾翼
- エレベーターのトリムタブを使用する代わりに、一部の航空機はスタビライザー全体を動かして調整する
- これは、ジャッキスクリューで駆動される(大型航空機ではモーターで駆動され、小型航空機ではクランクによる動作)
完成基準
訓練生はプライマリおよびセカンダリフライトコントロールとその機能を説明できます。 またトリムがどのように機能するかを理解し、それを効果的に使用することができます。
成功のポイント
本レッスンの各項目をレビューすること
- 使用の目的、場所、移動方向、効果、および適切な手順:
- プライマリフライトコントロール
- セカンダリフライトコントロール
- トリムコントロール
参考資料
- FAA-H-8083-3
- FAA-8083-3-25
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