Diamond DA42のシステムと操作
基礎知識
このレッスンでは、DA42システムに関連する要素とその動作を紹介します。DA42の主なシステムは、主な操作系とトリム、フラップ、動力機構、プロペラ、着陸装置、燃料、オイル、油圧システム、電気系統、電子機器、飛行計器、環境システムにより構成されています。飛行機の内部動作を理解すると、トラブルシューティングや問題の特定が容易になります。
主要操作系&トリム
エルロン
- ガラス繊維強化プラスチック/カーボンFRPの積層構造
- プッシュロッドを介して作動する
- ステンレス鋼とアルミ製のヒンジが取り付けられている
エレベーター(ガラス繊維による強化プラスチック)
- プッシュロッドを介して作動する
- セミモノコックサンドイッチ構造
- エレベータトリム
- 機械式(中央のコンソールのホイール)および電気式(ロッカースイッチ)によるシステムがある
- 2つの作動レバー
- 左レバー
- 操縦士の調整により長いフレキシブルケーブルに接続されており、トリムを調節する
- 右レバー
- 摩擦ダンパーがトリムケーブルの機械的な破損時にフラッタリング(不安定)を防ぐ
- 左レバー
可変式エレベータ留め
- 次の場合にエレベータの移動を制限する
- 両エンジン出力が20%を超える場合
- フラップは着陸用に設定される
- 着陸復行の際、過度の回転を防ぐために使用される
ラダー
- 制御ケーブルを介して作動する
- ラダートリム
- 中央のコンソールに取り付けられた黒いホイールにより制御される
- フレキシブルケーブルがトリムタブに接続されている
- 中央のコンソールに取り付けられた黒いホイールにより制御される
- セミモノコック構造
フラップ
- ガラス繊維強化プラスチック/カーボンFRP(CFRP)の積層構造
2か所の接続箇所
- 外側のフラップ:6個のヒンジ
- 内側のフラップ:4個のヒンジ
- 各断面には独自のプッシュロッド(合計4本)がある
- フェイルセーフ機構:内側と外側を接続し、フラップの分割状態を防ぐ
- 片側の押し棒が破損した場合でも、すべてのフラップは依然展開できる(分割状態の防止)
電気モータによる駆動
- 電動フラップアクチュエータは、回路遮断器(5[A])で保護されている
- 計器盤の右側にあり、手動で作動させシステムを無効にできる
計器盤の3か所ポジションスイッチによって制御されるフラップ
- 上位置 - 上 - 0度 (緑色のライト)
- 中位置 - クルーズ- 20度 (黄色のライト) - 137ノット
- 下位置 - 着陸 - 42度 (黄色のライト) - 111ノット
- 2つのライトが同時に点灯したとき、フラップは2つの位置の中間に入るポジションにある
動力機構&プロペラ
動力機構
- Thielert Diesel TAE 125-01エンジン
- 135馬力(2,300 rpm)
- 4シリンダ
- 4ストローク
- 液体冷却
- ターボチャージ
- プロペラ用減速ギア
- ウェットサンプオイルシステム
- 135馬力(2,300 rpm)
- ディーゼルエンジン
- 通常、燃焼室内(チャンバ)の圧縮/温度を確保するためにターボチャージングされる
- スパークプラグは無く、高圧と温度による空気/燃料混合物燃焼により駆動される
- ディーゼル/Jet A燃料はAVGASよりも多くのエネルギーを含む
- 燃費効率の向上/洗浄
- コモンレール噴射方式
- インジェクタを供給する高圧の燃料リザーバー
- 通常、燃焼室内(チャンバ)の圧縮/温度を確保するためにターボチャージングされる
- ターボチャージ
- 空気が燃焼用に適切に圧縮されていることを確認すること
- 空気は圧縮機で圧縮され、次にインタークーラーに送られる
- インタークーラーは熱くなった圧縮空気を冷却する
- 冷却により空気がさらに圧縮され、出力が増加し
- そして、燃焼室に送られる
- 排気はさらに圧縮機を回転させるためにダクトバックされる
- 圧縮機
- エンジンの排気はコンプレッサの作動に使用される
- 廃棄物ゲート
- コンプレッサを作動させる排ガスを少なくするために開閉するゲート
- 空気の増加=圧縮の増加
- 空気の減少=圧縮の減少
- コンプレッサを作動させる排ガスを少なくするために開閉するゲート
- その高度においてエンジンの圧力を維持するように調整する
- 空気が燃焼用に適切に圧縮されていることを確認すること
プロペラ
- 全般
- ガラス繊維による強化プラスチックで覆われた木材
- 定速、または完全フェザリング
- ギアボックス
- 1.69:1の比率
- エンジンは1プロップrpmごとに1.69 rpm回転するということ
- ギアボックスには独自のオイルシステム(エンジンとは別)がある
- 1.69:1の比率
- 定速ユニット(Constant Speed Unit:CSU)
- RPMレバーがないので、CSUはプロップピッチを調整します
- 油圧はピストンを動かすのに用いられ、ピストンはブレードのピッチを調整する
- 油圧の増加=細かなピッチ(ブレード角度がより平面に近づく)
- 油圧の減少=高ピッチ
- 油圧が失われた場合、プロップは自動的にフェザー(水平)される
- RPMが1300を超える場合にのみ発生する
- 1300 RPM以下の場合(通常のシャットダウン時と同様)、Coarse Pitch Stop機構はフェザリングを防ぐ
- 通常のシャットダウン時にはフェザー状態にならない
- アキュムレータ
- 圧力290 psi(窒素とオイルチャージ)を装置内に保持している
- 飛行中に再起動する際、この圧力を使用してプロペラのフェザー状態を強制的に解除する
- エンジンの回転速度が遅い場合のRPM維持に使用される
- エンジンの減速時(上昇時など)に一定のRPMを保つには、ブレード角度を小さく抑える必要がある(ピストンにはより多くの油圧が必要)で、通常の状況では、それを行えない場合、アキュムレータに蓄えられた油圧を解放して角度を減少させる
エンジン冷却
- 不凍液に基づく水
- 2回路方式
- 主回路はエンジンを冷却する
- バイパス回路はエンジン温度が低い場合に使用される
エンジン制御ユニット
- FADECの中核:重要なすべてのパラメータを監視、制御、調整する
- ECU×2(エンジン一機あたり)、A&B ECU
- Aは通常のオペレーションに使用され、Bはバックアップに使用される
電気駆動
- 電力はエンジンの始動に必要
- 余剰分
- 両方のECUは常に動作し、1つのECUのみがアクティブ状態
- Aが100%でない場合は、Bに自動切り替えされる
- 両方のECUは常に動作し、1つのECUのみがアクティブ状態
エンジンマスタースイッチ
- パワー:
- エンジンECU
- エンジンのプリヒート(フロープラグ)
- アキュムレータのフェザー状態を解除
- スターターの有効化
- 代替バッテリと励起バッテリを接続
オイルシステム
- エンジン用の1つのオイルシステム、プロペラギアボックス用の1つ
- エンジンオイル=ウェットサンプシステム
- エンジンオイルはエンジン内部に蓄えられることを意味する
- ドライサンプ=オイルリザーバーはエンジンの外側にあり、ポンプ式
代替空気
- エンジン室から空気が引き込まれる
- ひとつのレバーで両エンジンへ代替空気を開く
ランディングギア(着陸装置)
全般
- 完全引き込み式、油圧作動または電動
メインギア(主脚)
- トレイルリンクデザイン
- 下部にトレーリングリンクを持つ管状の支柱
- ホイールはトレーリングリンクに接続される
- ガス/オイルダンパが支柱後部とトレーリングリンクの間に取り付けられている
ノーズギア(前脚)
- 衝撃を吸収するためのガス/オイルダンパ付き鋼製支柱
- ステアリング
- 操舵リンクを介したラダーコントロールによって行われる
- バネ構成は、偏向時にギアを中心に戻す
- 離陸後、ノーズホイールは進行方向直進の形で格納される
油圧供給&制御
- 油圧制御ブロック
- 電動モーター
- 油圧ポンプ及び圧力スイッチ
- 油圧ポンプによるギアの展開/格納
- 圧力スイッチはシステム内の圧力を維持する
- 1400 psiでオン、1650 psiでオフ
- 油圧リザーバー
- 余剰油圧流体を蓄える
- 油圧アキュムレータ
ギア操作
- システムは常に加圧されている
- 電動バルブは、アクチュエータを動かす油圧を提供する
- 主脚は内側に格納され、前脚は前方に格納される
- アクチュエータの油圧がギアを後退させ続ける
- アップロックが無く、油圧に障害が発生した場合、ギアは展開される
- 電気系統に障害が発生した場合、ギアは自動的に展開される
- 電力が無いと油圧も同様に無くなってしまう
緊急展開
油圧を開放することでギアが重力により展開される
安全機構
- スクワットスイッチ
- 左主脚に配置される
- 地上において何かの拍子にギアが格納されないよう防止する働きをする
- 左主脚に配置される
- ギア警告ホーン
- エンジン出力がレバーが25%未満、または
- フラップが着陸設定の位置にあるときにホーンが鳴る
車輪ブレーキ
- 油圧式ディスクブレーキ
- トーブレーキペダルの使用で個別に操作される
パーキングブレーキ
- トーブレーキペダルを繰り返し押すと、必要なブレーキ圧力が上がり、ブレーキ解除されるまで有効である
燃料システム
燃料
- 主な2つのアルミ燃料タンク
- 各タンクは、ホースで接合された3つのチャンバを有する
- 1タンクあたり25ガロン搭載可能
- 各タンクは、ホースで接合された3つのチャンバを有する
補助タンク
- 2 つの(選択式)で、 13.2ガロン使用可能なタンク
- つまり合計26.4ガロン+ メインタンク50ガロン= 全体で76.4ガロン使用可能
- エンジンナセルの後ろに設置されている
- 燃料は、後部中央コンソールのポンプスイッチを介して、Auxから主タンクに移送される
構成
- 燃料セレクター
- 各エンジンにそれぞれ一つずつある
- 設定
- On(オン) - 通常の燃料フロー
- X-Feed(クロスフィード) - エンジンは反対側のタンクから燃料を引き出す
- Off(オフ) - エンジンへの燃料供給をやめる
- 表示器
- メインタンクの内と外側チャンバにはレベルセンサがある
- それら中間のチャンバにセンサは不要
- 低レベルセンサー
- タンク内の3~4 USG(米ガロン)で作動する
- メインタンクの内と外側チャンバにはレベルセンサがある
- 燃料クーラー
- 熱交換器を使用して燃料を冷却し、タンクに戻す
- インジェクタがコモンレールを通過するのに燃料の2〜3倍が必要となる
- コモンレールはきわめて圧力が高いので、燃料が非常に熱くなる
- 過剰な燃料はエンジンに戻されるが、最初に冷却される
- ベーパーロック現象を防止する
操作
- 2つの燃料ポンプ
- ブースターポンプ
- 高圧ポンプへ燃料を送る
- 高圧ポンプ
- 燃料をコモンレールへ送る
- ブースターポンプ
- 通常操作
- 燃料はタンクからエンジンに引き込まれ、未使用燃料は燃料クーラーを介してタンクに戻される
- クロスフィード
- 燃料は対向タンクからエンジンに引き出され、未使用燃料は元のタンクに戻される
- 反対側のタンクを過剰に満たさないようにする
- 燃料は対向タンクからエンジンに引き出され、未使用燃料は元のタンクに戻される
電気系
電力供給
- 2つのDC 28[V]、オルタネータ 60[A]
- ベルトドライブが各エンジンの左下に装着されている
- 計器盤にある個別のオン/オフスイッチで制御される
- システムから切断しただけで、オルタネータを実際にオフにすることはできない
- オルタネータはECUバスに直接接続され、常にECUに電力を供給する
- オルタネータ制御ユニット
- 温度に基づいて2つのオルタネータ間の負荷を分散させる
- 冷たい方のオルタネータがより負荷を受け取る
- 温度に基づいて2つのオルタネータ間の負荷を分散させる
- 励起バッテリ
- 12[V]、1.3 [A/H]の鉛蓄電池×2
- オルタネータを始動さるために使用
- また、オルタネータが磁場を発生できない場合にも、その電源を維持するために使用される
電力貯蔵
- メインバッテリ
- 24 [V]、10 [A/H」の鉛蓄電池
- バゲージコンパートメントの右後面に接地されている
- 24 [V]、10 [A/H」の鉛蓄電池
- 緊急電源パック
- 無充電式リチウムマンガン乾電池×10
- 3 [V]、1,300 [mA/H]
- 姿勢指示器(AI)のバックアップとフラッドライトを少なくとも1.5時間点灯維持できる
- 電気系統の障害とメインバッテリ障害の場合
- 姿勢指示器(AI)のバックアップとフラッドライトを少なくとも1.5時間点灯維持できる
- 緊急スイッチで制御
- ECUバックアップバッテリ
- ECUバックアップバッテリは、電気系統の全面的なな故障の場合、ECUに電力を供給し、エンジンを動作させ続ける
電力分配
- メインバッテリはバッテリバスに接続
- バッテリバスはLH/RHメインバスに接続
- LHメインバス
- Lオルタネータに接続
- LH ECUバス
- RHメインバス
- Rオルタネータに接続
- RH ECUバス
- 電子機器バス
アビオニクス(電子機器)
- G1000
- ユーザーマニュアル参照
- PFD
- 主要な計器により構成される
- MFD
- ナビゲーションおよびエンジンに関する計器
ピトー静圧系統
- ピトー静圧
- ピトー圧は左翼下前縁に取り付けられた校正済の装置(プローブ)により測定される
- 静圧も同じ場所の装置により測定する
- 計器
- G1000は、ピトーと静圧プローブから入力されるアナログ情報を受け取り、デジタル情報に変換する
環境
キャビン暖房&曇り止め装置
- キャビン用暖房は、右エンジンナセル内の熱交換器から送り込まれる
- 除氷用の暖気は左エンジンナセル内の熱交換器から送り込まれる
除氷 / 防氷装置
全般
- 翼保護
- 防氷液の薄膜を翼、垂直尾翼、水平尾翼、プロペラ、キャノピーの上に分配する
構成
- タンク
- 7.9ガロン搭載可能
- 低レベルセンサー(45分)
- ノーズ内に取り付けられている
- ポンプ
- メインポンプ2台
- 翼、尾翼、プロペラに使用
- フロントガラスポンプ2台
- モード
- 標準
- Normに切り替えることで作動
- 主要の両ポンプは同時に動作する
- アキュムレーション前に使用する
- ポンプサイクル:30秒間オン、90秒間オフ
- 最大期間:2.5時間
- 高
- Highに切り替えることで作動
- 1台のポンプが連続して動作する
- 着氷が広がったときに使用する
- 最大期間:1時間
- 最大
- Maxに切り替えることで作動
- 両方のポンプが連続して動作する
- 厳しい着氷状況下で使用する
- 両方のポンプを2分間実行
- 最大時間30分
- 標準
- 風防の押しボタン
- 選択したポンプを5秒間アクティブにする(メインシステムのスイッチがオフの場合でも)
- 代替スイッチ
- L側の主要バスが失われた場合(L側主要バス上のアイスシステム)
- 代替スイッチを反転してシステムをRメインバスに接続させる
- L側の主要バスが失われた場合(L側主要バス上のアイスシステム)
完成基準
操縦士は、DA42機のシステムおよび動作を理解しています。
成功のポイント
以下についてレビューすること
- 主要操作系とトリムについて
- フラップ、前縁デバイス、スポイラーについて
- 動力機構とプロペラについて
- 着陸装置について
- 燃料、オイル、油圧システムについて
- 電気系統について
- 電子機器について
- ピトー静圧/吸気システムおよび関連機器について
- 環境について
- 除氷·防氷について
参考資料
- FAA-H-8083-23
- FAA-H-8083-25
- FAA-H-8083-3
- POH/AFM
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