Beechcraft BE-76 Duchessのシステムと操作
基礎知識
このレッスンでは、BE-76システムとその運用について紹介します。 BE-76Duchessの主なシステムには、主要な操縦系統とトリム、フラップ、エンジン動力、プロペラ、着陸装置、燃料、油圧系、電気系統、計器類、環境系が含まれます。 機内の動作を理解すると、トラブルシューティングや問題の特定をより適切に行うことができます。
全般
タイプ
- 金属製フレーム、低翼、格納3輪式着陸装置の双発機
胴体
- アルミニウムのセミモノコック構造
- 内部支柱フレームと金属外表面板の両方が機体の荷重を共有して支える
- 機体の左側後方にユーティリティドアがあり、後方のキャビンエリアに荷物を積み込むことができる
- 非常口
- 非常出口は、前方のキャビンドア又は後方のユーティリティドアのいずれかになる
翼
- 翼はセミテーパ型の設計である
- 翼はエルロンならびにフラップが取り付けられている
胴体
- T型尾翼
- 垂直尾翼と上方に取り付けられた水平尾翼から成る
主要な操縦系統
- 操縦系統は、従来のケーブルシステムと、プッシュプルロッドを介して支持され終端に取り付けられたベルクランクが操作される
コントロールカラム
- パイロット/コパイロット用のデュアルコントロールシステムを採用
- 制御する操縦桿を相互に接続し、エレロンとエレベータ制御を提供する
ラダー
- パイロットとコパイロットの量座席株にラダーペダルが取り付けられている
- 一組のラダーペダルにトー圧を加えることで、着陸装置の主脚に取り付けられたホイールブレーキを作動させる
トリム
- 手動または電動ピッチトリムシステム
- 手動エレベータトリム
- 操縦席の間にあるハンドホイールで操作する
- エレベータトリムタブの位置インジケータは、トリム制御ハンドホイールに隣接して配置されている
- 前方回転=下向き(機首が)
- 後方回転=上向き(機首が)
- 操縦席の間にあるハンドホイールで操作する
- 電動エレベータトリム
- ON-OFFの回路遮断器型スイッチで制御
- 左側のサブパネルにあり、パイロットのコントロールホイールのサムスイッチでも操作できる
- 緊急解除ボタンは、パイロットのコントロールホイールの左側のグリップにある
- ON-OFFの回路遮断器型スイッチで制御
- 手動エレベータトリム
- エルロントリム
- 中央下のコンソールに配置
- 設定の変更は、トリマーによって課されるケーブルの荷重(張力)によって維持される
- 中央下のコンソールに配置
フラップ
- フラップは右後席下の電動モーターで作動する
- スイッチによる操作で3つの位置に設定できる
- 上(UP)、下(DOWN)、オフ(OFF)の位置
- 位置を変更するには、スイッチを戻す必要がある
- インジケータゲージ
- 上(UP)、10°、20°、下(DOWN、35°)
- 上(UP)、下(DOWN)、オフ(OFF)の位置
フラップ位置にかかる時間はそれぞれ、上→10°/3秒、10°→20°/1秒、20°→35°/1秒かかる
エンジン動力
動力部
- 2機のAvco Lymcoming社O-360-A1G6D型エンジンを搭載している右側のエンジンは“L”O-360-A1G6Dとして指定されている
- パイロットから見て左に回転する
- コックピットから見て
- 左エンジンは時計回りに回転する
- 右エンジンは反時計回りに回転する
- 各エンジン
- シリンダ×4、360立方インチ変位
- 直接駆動(プロペラに直接接続されたクランク軸)
- 水平対向(ピストン同士が対向)
- 空冷
- ピストン駆動
- 通常は吸気式(ターボまたは過給なし)
- 気化式
- 出力定格: 180 BPH @ 2,700 RPM
- エンジンの制御はコックピット内に取り付けられており、各エンジンに対して次の三つレバー、スロットル(黒)、プロペラコントロール(青)、およびミクスチャー(赤)で構成される
- スロットルレバーは、マニホールド圧力を調整するために使用される
- プロペラコントロールレバーは、プロペラ速度を高RPMからフェザー状態に調整するために用いられる
- ミクスチャーレバーは、空気と燃料の混合比を調整するのに用いられる
エンジンの不要な損耗やエンジンの損傷を防ぐために、これらスロットル操作は急がず、すべてスムーズな動きで行う必要がある
カウルフラップ
- 手動カウルフラップは、キャブレターのヒートコントロール下に取り付けられた各レバーによって制御される
- エンジンの冷却空気を調整するために使用される
- 3つの位置に設定ができる:閉じる(レバー上位置)、半分(中央位置)、開く(レバー下位置)
オイルシステム
- ウェット式排水溜め、圧力タイプ
- 容量8クォート
- 最小5クォート
- 各エンジンには独自のディップティックがあり、交換はできない
- 各ディップスティックには「LEFT ENGINE」または「RIGHT ENGINE」という文字が刻み込まれている
プロペラ
- Duchessは、離陸時と上昇時に均衡のとれた推力を提供し、互いに逆回転するプロペラを装備することで、ひとつのエンジンが動作不能になった際に発生するクリティカルエンジンの要素を排除している
全般
- 各エンジンは、Hartzell社の2枚翼、定速、フルフェザリング機能を持った金属製プロペラを搭載している
- 右エンジン:HC-M2YR-2CLEUF (ハブ) / FJC7666A (ブレード) / C2285-3LP (スピナー)
- 左エンジン:HC-M2YR-2CEUF (ハブ) / FJC7666A (ブレード) / C2285-3P (スピナー)
操作
- プロペラピッチは、ハブ内の油圧を調整するエンジン駆動プロペラガバナにより制御される
- バネとドームの空気圧が、カウンタウェイトの影響を受けて、ブレードを高ピッチつまり低RPMの位置に移動させる
- ガバナ昇圧下のエンジンオイルは、ブレードを低ピッチつまり高RPMの位置に移動させる
- 各ガバナは、飛行条件の変化に応じて、負荷トルクとエンジントルクとが一致するようにプロペラのピッチを変化させてエンジン回転数を制御する
- プロペラブレードは、ブレードベース内に退避する遠心ロックピンを有する
- プロペラの回転が700~800 RPMより速い場合、これらのピンはブレードベース内に残り、プロペラがフェザー位置に移動するのを促す
- 700~800 RPM以下の場合、ブレードのフェザリングを防ぐためにピンが飛び出す
- このため地上でエンジン停止状態であってもブレードはフェザリング状態にならない
非フェザーアキュムレータ
- エンジンの圧力を受けてエンジンオイルを貯蔵し、プロペラのフェザー状態を防ぐために、そのオイルとガバナーに直接放出する
- 一度しか使えない!
- もし使用してもフェザー状態から抜け出せない場合、このアキュムレータはエンジンを再始動するまで使えなくなる
- つまり操縦士は、スターターを使って、エンジンを空中で再始動する必要がある
- もし使用してもフェザー状態から抜け出せない場合、このアキュムレータはエンジンを再始動するまで使えなくなる
- 一度しか使えない!
着陸装置
全般
- 油圧による完全格納式で、電気的に作動させられる
- コクピット左のサブパネルにあるスイッチ(2つの位置設定)により操作する
- 作動させる前に、安全用留め具から引き出す必要がある
- 着陸装置システムは、電気駆動、可逆ポンプを使用してハイドロ流体を動かす
- 2つのサーキットブレーカー:ひとつはポンプ用、もうひとつは制御用
- 着陸装置は、1250~1550qtjの油圧で格納位置に保持される
- 着陸装置は、オーバーセンターブレースとばねを使用して、下向きにロックされる位置を維持する
油圧ポンプは、30秒間の連続運転の後に解放されるといったタイムラグがある
- 油圧ポンプの作動中は、着陸装置のセレクタスイッチを(上から下、または下から上へ)反対方向へ入れないように
- 着陸装置の作動ポンプがダメージを受ける!
- そのため着陸装置の展開または格納サイクルが完全に終了するまで待ち、そこからセレクタスイッチを目的の位置に移動させること
- 着陸装置の作動ポンプがダメージを受ける!
ポジションインジケータ
- ポジションインジケータライトは、着陸装置スイッチハンドルの上にある。着陸装置を展開-ロック
-
- 3つの緑ライト点灯により示される
- 着陸装置が格納/展開稼働中
- 1つの赤ライト店頭により示される
- 着陸装置を格納
- すべての点灯ライトが消滅
-
- インジケータそれぞれの面を押すことで、ポジションインジケータが正常に機能していることを確認する
- ランプの明るさは各レンズホルダを回動させて調整する
着陸装置の緊急展開
この手順を実行する場合は、必ず適切なチェックリストを参照すること
- 着陸装置が正しく展開されない場合は、緊急展開手順チェックリストを使用する
- 着陸装置システムは、パイロットの前方のフロアパネルの下に位置する油圧バイパスバルブを装備している
- このバルブを反時計回りに90°回転すると、油圧が解放され、着陸装置が自由展開され、ロック位置まで重力に引っ張られて下ろされる
- 最大緊急展開速度は100 KIAS
- 油圧が失われた場合、重力によって、着陸装置が展開-ロック位置にフリーフォールする(上記の通り)
着陸装置の安全/警告
- 圧力安全スイッチ
- 地上において着陸装置が格納されてしまうことを防ぐ
- ピトー管システムに組み込まれている
- 衝撃空気圧が59 - 63ノットより低い場合において、油圧ポンプ回路を非アクティブにする
正しいチェックリストの使用に代わり、警告ホーン頼りにするのは絶対に控えること
- 着陸装置警告ホーン
- 警告ホーンは、意図しない装置格納状態での着陸を防ぐことに役立つ
- 次の3つの場合において、着陸装置の警告ホーンが鳴る
- スロットルを飛行維持できないレベル(例えば着陸時の出力設定)まで絞った状態のとき、着陸装置が展開-ロック状態になっていない
- フラップの位置設定が16°未満で、着陸装置が展開-ロックされていない
- 機体が地上にあるとき、セレクタスイッチがUP位置にある場合
着陸装置を動作させる対気速度
- 展開可能な最大速度(Vle / Vlo) - 140 KIAS
- 格納可能な最大速度(Vlr) - 112 KIAS
- 前脚がロック解除され、ホイールが機首側に格納される動きに対して、それに正面からあたるラムエアーが機体後方側に押し戻そうとするので、格納速度は延長より遅くなる
- 上記速度よりも早い状態で作動させると、前脚にダメージを与える可能性がある
- 前脚がロック解除され、ホイールが機首側に格納される動きに対して、それに正面からあたるラムエアーが機体後方側に押し戻そうとするので、格納速度は延長より遅くなる
- 緊急展開可能な最大速度 – 100 KIAS
- この速度は遅く、前脚は向かい風の方向へ進んでいく
ホイールブレーキ
- 油圧作動式のディスクブレーキが主脚のホイールに搭載されている
- ブレーキの油圧システムは、着陸装置の油圧システムとは別のものである
- 整備用のブレーキ液リザーバが、機首内部構造の左側に位置する
- トーブレーキペダル(ラダーペダル上部を押し込み)を用いて個別に操作する
パーキングブレーキ
- パーキングブレーキをセットするためには、ブレーキを踏みこんだ状態でパーキングブレーキノブを引く
燃料系統
燃料
- 各翼のナセルからそれぞれ翼端末外部に向かって前縁部分に沿って配置された燃料タンクで構成される
- 各翼51.5ガロンを搭載できる
- そのうち使用可能分はそれぞれ51.5ガロン(片側当たり使用可能)
- 合計容量 – 103ガロン
- 使用可能燃料合計 – 100ガロン
- 各タンクには視覚測定タブがある
- 30ガロン(28.5有効)と40ガロン(38.5有効)の標示で、タンク上部が満タン
- 承認された燃料タイプ
- 100 (緑色)
- 100LL (青色)
- 4つの燃料通気口
- 各燃料キャップ(タンクの締め蓋)に1つ、各翼の下に1つ
- 合計8個の燃料サンプ
- 片エンジン側にに4つのサンプがある
- 各タンクに1サンプ
- 各エンジンストレーナに対してサンプを1つ
- 各クロスフィードラインに対してサンプを2つ
- 片エンジン側にに4つのサンプがある
構成/操作
- 燃料セレクタ各エンジンには1つずつ
- コックピット内フロアコンソール上(正面座席の間)に配置
- 3つの燃料セレクタ設定
- オン – 通常の燃料流量
- オフ – タンクからエンジンへの燃料の供給を停止する
- クロスフィード(X FEED)– エンジンは反対側の燃料タンクから燃料を引き出す
- 燃料インジケータ
- 2つの燃料計
- 各翼タンク内にある、2つのフロート式センサーで測定
- 2つの燃料圧力計
- 2つの燃料計
- 燃料ポンプ
- 2つのエンジンによる駆動
- 2つの電動補助燃料ポンプ
- 電動補助燃料ポンプは、次の場合に圧力を提供する
- エンジンのプライミング、始動、タキシング
- 離陸と着陸
- 燃料セレクタの変更時
- エンジン駆動の燃料ポンプが作動しなくなった場合への十分な圧力
- 電動補助燃料ポンプは、次の場合に圧力を提供する
- クロスフィード
- 燃料を片方タンクからもう他方へ移すことはできない。ただし、どちらのタンクも両方のエンジンをクロスフィードモードで供給でる
- 燃料クロスフィードシステムは、緊急時における直進飛行姿勢でのみ使用すること
電気系統
電源供給
- プッシュプル型の回路遮断器(ブレーカー)を使用した28ボルトの電気システム
- 12 V、25 A鉛蓄電池x 2
- 28 V、55 Aベルト駆動の代替電池(オルタネータ)x 2
- 個別の電圧レギュレータ
- 電圧レギュレータは、各エンジンのRPMによるオルタネータからの出力を14ボルトに保って保つ
- これにより、電気負荷を効果的に分散できる
- インジケータ
- 2つの負荷メータ、オルタネータ出力表示板、および過電圧表示板
- オルタネータは、上記表示板を出力し、電流計上のゼロ表示は、オルタネータ障害を示す
- 一方のオルタネータに障害が発生した場合、もう他方が十分な電力を供給する
ピトー静圧系
- 計器類
- 高度計、対気速度計、昇降計
- 加熱式ピトー管は左翼に取り付けられている
- 機体後部両側に2つの静圧孔のポート
- 代替の静圧ソース
- コックピット内
- 通常の静的ポートが詰まるなどの障害発生時に使用
- POHのパフォーマンスセクションで、対気速度キャリブレーション(校正)と高度計の補正グラフを確認すること
- コックピット内
圧力系
- 2つのエンジン駆動式、ドライ式、圧力ポンプが装備されている
- それらは単一のシステムから相互に接続されている
- ジャイロ計器
- 姿勢指示器
- 飛行方位計
- 吸引制限
- 4.8 ~ 5.2インチ(水銀)
- 圧力ポンプの故障
- ジャイロ系の表示板点灯は、圧力ポンプの損失を示す
- 圧力ゲージは、操縦士のサブパネルに配置されている
- 1つの真空ポンプの故障で、すべての景気が失われることはない
- 残りのポンプが、すべてのジャイロ計器を操作し続ける必要がある
- ジャイロ系の表示板点灯は、圧力ポンプの損失を示す
環境系
燃焼式ヒータ
- ジャニトロール燃焼式ヒータ(右側の機首内部に設置されている)
- 45,000 BTU(英熱量単位)
- 室内暖房と風防の除霜に対して暖気を供給する
- ヒータの燃料消費量は、毎時約2/3ガロンで、右側の燃料タンクから取り出される
- 飛行計画における使用燃料に計上しなければならない!
- 機首内部のコンパートメントに配置された燃料ポンプが左タンクからヒータに燃料を供給する
- 外気を取り込み、点火プラグと燃料を使用して「高速旋回する炎」を作り出す
- この炎からの熱は、ヒータおよびシュラウドの周りを移動する空気を加熱し、キャビンに押し込む
- エンジンの排気は含まれない
- ヒータがオンの場合は、熱を直ちに感じる必要がある
燃焼式ヒータの安全
- ヒータが故障した場合に機能をオフにするための安全機能として作動する過熱スイッチ
- 内部温度300°Fに達すると、ヒータを非アクティブにする
- ヒーターはメンテナンス担当者が地上でのみリセットできる
失速警報
- 各翼の前縁に電気感知式のベーンが取り付けられている
- 左翼のホーンは、フラップが0~16°のときにトリガーされて作動
- フラップが17 ~ 35°の間にある場合、右翼に取り付けられたベーンがトリガーされて作動する
除氷/防氷
- 公表されたアイシング状態に対して認可が下りていない
完成基準
操縦士はBE-76システムとその運用を理解します。
成功のポイント
本レッスン内の各項目をレビューすること。
- 主要な操縦系統とトリム
- フラップ
- エンジン動力 & プロペラ&運用
- 着陸装置の操作/安全機能
- 燃料、油、ハイドロシステム
- 電気系統
- ピトー静圧/圧力システムおよび関連機器
- 環境系
- 失速警告
- 除氷・防氷
参考資料
- FAA-H-8083-23
- FAA-H-8083-25
- FAA-H-8083-3
- POH/AFM
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