エンジン一基停止時の進入と着陸

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ACS/PTS・オペレーション分野 FAA 陸上多発ー飛行機
緊急事態への対処と運航
該当する資格 自家用操縦士, 計器飛行証明, 事業用操縦士, MEI

基礎知識

このレッスンでは、動作不能エンジンでの着陸に関連する要素を理解します。作動しないエンジンでの進入と着陸は、通常とは異なる方法で扱うべきです。機体の性能や配置の変化に伴い、安全性を維持するために、進入と着陸の取り扱い方を変える必要があります。

動力喪失後の機体制御維持

動力喪失の認識&方位制御の維持

  • エンジン不具合を視覚的に認識する最も簡単な方法(VMCの場合)
    • 操縦士が、機体が機能停止などの不具合を抱えたエンジンの方向へ向かうような、制御外のヨーイングを認識する
    • 視覚認識により、より良い制御が可能になり、エンジンに関連した計器類を見つめすぎず、飛行機を飛ばすことができる
  • IMCでは、計器上でエンジンの不具合が認識される、機体は動作不良のエンジンに向かって旋回し、機首は下がり、エンジンに関連した計器類は不具合を示す
  • よくある間違い :操縦士が動作不良のエンジンを認識することができない
    • 操縦士が方向制御を維持するためのラダーとエイロン操作を誤った場合は;
      • ロールに対抗し、目視で機首方位を維持するために、約2~3度のバンクを追加し、ゼロサイドスリップ状態を確立する(航空機はほぼ横滑り状態に陥る)
        • 機首方位を維持するため2~3度のバンク角とラダー圧が設定され、計器からゼロサイドスリップ状態をダブルチェックし、必要な修正変更を行う
        • ゼロサイドスリップは、航空機の種類によって異なるが、1~3度のバンクを動作中のエンジンに向け(旋回釣合計のガラス管内ボール1/2ボール分が動く程)て出力をを絞る必要がある
  • よくある間違い:操縦士が最適なパフォーマンスを得るために適切なバンクを確立および維持できない
    • バンク角を増やしたり、少なくしたりすると、機体に余分な抵抗が生じるため(調整が行われなくなったため)、パフォーマンスが低下する

各コントロールの設定(出力全開)

  • 最初は、両方のエンジン出力を全開にする
    • 出力を増やすとラダー入力量も増える
    • より大きな出力になるほど、そしてより多くのヨーが生じる、出力を上げず、また機首方位の維持も失わないようにする
    • エンジンとラダーの圧力をそれぞれスムーズに増加させる(素早い動きは制御しにくいので)

抗力の減少

着陸装置とフラップが格納されていることを確認 よくある間違い:エンジンの制御を適切に調整できず、抗力を減らせない

  • エンジン出力が無くなったので、残ったほうではフルパワー出力必要だ
  • 高度低下を防ぐには、抗力を減らす必要がある

エンジンの故障時は、常にフルパワー全開にし、抗力を即座に軽減すること

    • 真っすぐ正面に着陸しない場合に限り
  • 機体の制御を維持し、出力の増加に伴い右ラダーをあてていくこと

識別

  • デッドフット/デッド・エンジン(Dead Foot, Dead Engine)
    • ラダー入力に使用されない方の足は、動作停止したエンジンに関連付けられる
      • 例えば右足が地面で「死んだ」場合、右エンジンは故障したエンジンである、と

検証

検証/確認するには、デッドエンジン(動作停止側)と思われる方の出力を絞りアイドル状態にする

  • その操作を行っても何の変化もない
    • ここでもし機体が急に明後日の方向にヨーイングし出した場合は、上記で誤った操作をしたことが分かる
  • 仮に突発的に誤って正常動作している方のエンジンを触ってしまった場合でも、出力を緩やかに減らして調整すると、制御が容易になる(繰り返すが、素早い動きは制御しにくくなる)

よくある間違い:動作しないエンジンを不適切に識別し、検証することによる危険性

  • 間違ったエンジンを選ぶのは非常に危険な場合がある
    • エンジンが1つ故障した場合、誤って正常動作している方のエンジンをフェザーすると(故障したエンジンの識別検証確認を正しく行わない、またはスキップしたため)、全動力を失う事態に陥る場合もある

修正またはフェザー(水平化)

もし故障したエンジンに応急処置の対応ができる時間と高度がある場合

  • 製造元の手順に従うこと

よくある間違い:所定の緊急チェックリストに従わない

  • チェックリストの各段階から1、2段階ごとに一拍おいて、対気速度、高度、針路、ゼロサイドスリップ状態、エンジンに関連する各装置をチェックすること
    • チェックリストを早く済ませる必要はなく、飛行機を飛ばすことが最も重要である

対応が難しい場合(またはその時間が許さない場合)は、エンジンをフェザー状態にする

  • 製造元の手順に従うこと

よくある間違い:所定の緊急チェックリストに従わない

  • チェックリストの各段階から1、2段階ごとに一拍おいて、対気速度、高度、針路、ゼロサイドスリップ状態、エンジンに関連する各装置をチェックすること
    • チェックリストを早く済ませる必要はなく、飛行機を飛ばすことが最も重要である

故障したエンジンをフェザー状態にする前に、必ずいつも、自分が手にかけているスロットルレバーが故障しているエンジンであることを確認すること
フェザー状態においては、ラダー入力量を減らすことができる

  • 動作していない側のエンジンプロペラの抗力が減少するので、デッドエンジンに向かうヨーが減少する
  • 各コントロールの入力を調整して、サイドスリップをゼロに保つこと

動作停止中のエンジンを再始動

製造元の手順に従うこと よくある間違い所定の緊急チェックリストに従わない
手順をなぞっている際の制御管理

  • エンジンの再始動時には、ヨーとドラッグが増加するにつれ、ラダーを当てる量を増やす必要がある

出力を上げるに従って、ラダーを調整する

  • ラダー/エルロンを視覚的に使用して方向制御を維持

概要:制御、フルパワー、ギアアップ、フラップアップ、識別、検証、固定、またはフェザーの維持 – 常にVYSEを最小限に維持

  • よくある間違い:動作不能エンジンに対してベストな対気速度を確立し、維持できない

エンジン一基による進入

ゼロサイドスリップの維持

  • 抗力を最小限に保つ
    • 高い抗力は降下速度を速くし、それを遅くするためエンジン出力を増す
      • これには多くの労力が必要
        • 出力が高ければ高いほど、大きなラダーが必要だ(やりすぎない程度に)

若干高いアプローチ角度の維持(3度ではなく3.5 - 4度の進入角度)

  • 無理やり引き延ばさないこと(低いアプローチ/平らなアプローチなど)
    • この結果、滑走路に到達するための高いエンジン出力が必要となり、ラダー/ゼロサイドスリップを維持する労力が増す

対気速度と構成に対するメーカーによる手順の遵守

  • 最も可能性が高いのは、対気速度(VYSE付近)で、フルフラップを使用しない場合
  • よくある間違い:適切な時間と順序で適切な進入/着陸構成を確立できない
  • よくある間違い:風のシアまたは乱気流に適切な手順を使用できない

着陸復行は望ましくない

  • 航空機の上昇能力や大気条件によっては、着陸復行が不可能な場合もある
  • 「AFMパフォーマンス」セクションの単一エンジンの上昇率を常に確認すること
    • 驚かないこと
    • 製造元の推奨事項に従うこと

エンジン一基による着陸

着陸は基本通常通り行う

  • ラウンドアウト/フレアの間は、出力をアイドルになるまで絞り、それに伴いラダーの圧も同様に減らしていく
    • ラダーの圧を下げないと、航空機は圧を入力した方向に旋回する
      • 注意:ラダーは、動作エンジンの推力によって生じるヨーを相殺する
        • 推力を取り除くとヨーイングも取り除かれるので、ラダーを減らす必要がある
  • よくある間違い:トリム手順が正しくない
  • アイドル時のパワーで、滑走路中心線に沿った通常の着陸を行う
    • 滑走路の最初の末端から1/3以内の距離に着陸すること
  • よくある間違い:ラウンドアウトとタッチダウン時の技術障害
  • よくある間違い:タッチダウン後の不適切な方向制御
  • よくある間違い:ブレーキの不適切な使用

よくある間違い

  • 所定の緊急チェックリストに従わないこと
  • 動作しないエンジンを正しく識別して確認できない
  • エンジン制御を適切に調整し、抗力を減らすことができない
  • 動作不能エンジンに対するベストな対気速度を確立し、維持できない
  • 不適切なトリム手順
  • 適切な時間と順序で適切なアプローチと着陸の構成を確立できない
  • 風のシアまたは乱気流に対して適切な手順を使用できない
  • ラウンドアウトとタッチダウン時の技術の誤り
  • タッチダウン後の不適切な方向制御
  • ブレーキの不適切な使用(陸上機)

完成基準

操縦士は、単発機と双発機の違いと、エンジン故障、クリティカルエンジン、VMCの違いを理解しています。

成功のポイント

本レッスン内の各項目をレビューすること。

  1. 所定の緊急チェックリストを用いて、動作不能エンジンの確保に関する手続の実施を検証について
  2. エンジン制御の適切な調整、抗力の減少、動作不能エンジンの識別と検証について
  3. 動作不能エンジンに対するベストな対気速度を確立し、維持する方法について
  4. トリム手順
  5. 最適なパフォーマンスを得るために必要に応じてバンクを設立および維持する方法について
  6. 動作エンジンの監視と調整について
  7. 選択したタッチダウンエリアに対する適切なアプローチを、推奨飛行速度で行うこと
  8. 飛行制御の適切な適用について
  9. 正確な地上線を維持する方法について
  10. 風のシアと乱気流について
  11. ラウンドアウトとタッチダウンの間の適切なタイミング、判断、制御手順について
  12. タッチダウン後の方向制御について
  13. ブレーキ(陸上機)の使用について
  14. トリム手順が正しくない
  15. 動作不能エンジンでのアプローチと着陸に関連するシミュレーションされた一般的なエラーを分析し、修正する

参考資料

  • FAA-H-8083-3
  • POH/AFM
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